RPA運用を成功につなげるフローとは?
失敗につながるケースも解説
近年、「生産年齢人口減少に伴う人材不足」をはじめとする社会的背景からRPA(Robotic Process Automation)がますます脚光を浴びています。RPAを導入する企業は増加傾向にあり、導入割合を企業規模別に見た場合、1000人以上の企業で85%、300~1000人未満の企業でも80%となっており、すでに中小企業にもRPAが普及しているという状況です。さらに、この増加傾向は新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、多くの国内企業がテレワークを実施したことはデジタル化のニーズを高め、今後さらに導入率は増加するものと思われます。このように注目されるRPAですが、「労働時間の削減」をはじめ、成功の兆しが見える企業がある一方、「導入したものの上手く機能していない」などの悩みを抱える企業は少なくありません。そこで、今回の記事では、失敗につながる典型例を踏まえて、成功に導くRPA導入・運用の流れについてまとめていきます。
RPA導入が失敗につながる典型例
すでに多くの企業が導入し始めているRPAですが、一体何がその「成功」と「失敗」を分けているのでしょうか?まずは、RPAの導入に失敗してしまう典型的な例を紹介していきます。
「RPA導入」自体が目的化してしまうケース
はじめに紹介するのは、RPA導入を急ぐ余り、徐々に「RPAの導入」自体が目的化されてしまう例です。現状の課題や目的の明確化、さらにはROI(投資対効果:return on investment)の策定が不十分なままRPAの導入が先行することで、「根本的な目的」を見失ってしまうことも珍しいことではありません。その結果、自動化すべき業務の選定や連携対象となるシステムを検証しきれないことから、RPAによる効果が曖昧になるケースです。
RPAツール選定の落とし穴
次に挙げられるのが、「RPAツールの選定」です。一言にRPAと言っても、ベンダーは数多く存在し、それぞれにツールの特徴も異なります。RPAツールが自社に適していなかった場合も、導入や開発者育成に費やしたコストを考慮すると、ツールの変更は難しくなります。また、このような不備を理解しながらRPAの運用が進行してしまうことで、引くに引けない状況に陥ってしまう企業も少なくありません。
RPAの導入を成功に導くためのフローとは?
次に、「RPA導入における失敗パターン」を踏まえた上で、RPAの導入・運用の流れについてまとめていきます。RPAツールの中には、ベンダーによるサポートが不足するものもあるため、導入・運用のフルサポートに対応しているサービスを検討することも視野に入れましょう。
1.目的を明確化する
RPAの導入に際してはじめに着手するべき業務は、「目的」を明確化することです。RPAは導入が完了するまでに数カ月の期間を要する場合もあるため、先述した失敗パターンのように、「RPAの導入」自体が目的化してしまわないよう注意する必要があります。目的を明確化する際は、単に「業務を効率化する」などの文言に留めるのではなく、具体的な数字をROIとして併せて設定しておくことで、目的の達成度を定量的に判断することができます。RPAによる効率化が影響している利益から投資コストを算出することもできるため、重要な点です。
2.効率化を実現するための体制を構築する
RPAの導入・運用により業務効率化を実現するためには、現場との連携が不可欠です。ロボット開発を専任チームで一元的に行う場合であっても、開発者は業務フローを全て理解できているわけではないため、自動化対象となる業務の担当者と常に連携して開発を行う必要があります。一方、現場でロボット開発を行う場合には、現場の開発者への技術的なサポートを行います。さらに現場で開発したロボットが問題なく動作するか、またコンプライアンスに違反していないかなど、検証作業も必要になり、これらの作業を実施可能な体制が必要になります。
3.RPAを適用する業務の選定
次に、RPAを適用する業務の選定をおこないます。これは、RPA導入におけるフローの中でも重要な工程のひとつです。業務の選定をおこなう際に重要になるのが、「RPAによる自動化に適した業務を見極めること」です。RPAはパターン化できない「非定型業務」ではなく、データ入力や資料作成、形式的な書類作成など、マニュアル化が可能な「定型業務」に対応しています。また、定型業務にかけている時間や従業員が多いほど自動化する効果は高まりやすいという特徴があります。ただし、注意する点は導入効果が高いからと言って、業務フローが複雑であったり、作業量が極端に大きくロボットのシナリオが膨大になる場合は、不具合の影響を受け易く、メンテナンス工数も負荷が大きいため、できるだけフローがシンプルな業務を選定することがポイントです。
4.ツールを選定する
自動化を適用する業務範囲を設定した次は、「RPAツール」の選定をおこないます。こちらもRPA導入において大変重要な段階ですが、先述したように、ベンダーは数多くあり、機能や操作性が異なるさまざまなツールが販売されているため、選定は容易ではありません。選定をおこなう際は、目的を達成するための機能の有無をはじめ、費用や既存のシステムとの連携、ユーザの利用環境なども重要な要素になります。具体的にはテレワーク環境で利用する場合、オフィスに設置された開発端末や管理サーバーを操作することが難しいと言えますが、クラウド型のツールであればブラウザーのみでツールを利用することが可能です。このように、RPAツールの選定にはさまざまな面を考慮する必要がありますので、「業務の選定」と併せて、導入・運用サポートに対応しているサービスに相談する価値がある段階と言えます。
5.試験導入を通して最終確認をおこなう
選定作業を終えた後は、試験導入に移ります。本格的な導入を前に、これまでの段階で把握しきれていない想定外のトラブルについて洗い出しておく必要があります。本格導入を見据え、同じ環境で運用を試みることで、「問題なく作業を実行できるか」「想定した性能をコミットしているか」また、不具合が発生するようであれば本番環境に合わせた「シナリオの修正やチューニング」を行います。
6.RPAの本格的な導入
試験導入で洗い出した問題について対応を策定した後、本格導入に移ります。現場の人間にとっては新しいシステムのため、利用に関するガイドラインや操作マニュアルの用意、勉強会の開催、研修なども必要になります。また、実際に運用を開始した後も、効果検証やメンテナンスが大切になるため、「導入」が「問題解決のスタート」であることを全体で共有することも重要です。
まとめ
ここまでRPAの導入・運用を成功につなげるためのフローについて見てきました。RPAを導入する際はツールの調査・選定や自動化する業務の選定、さらには管理・運用体制の構築、運用に必要なガイドラインやFAQなどのドキュメント類の準備も必要になります。これらの全てを自社で対応することも可能ですが、知見やノウハウを持つベンダーの支援を受けることも有益な選択肢と言えます。日立ソリューションズでは、導入ステップに応じた支援サービスを提供しており、「自動化すべき業務やRPAツールの選定」や「ロボット開発における技術支援」「運用業務の負担軽減」などワンストップで支援しています。運用担当者の方をはじめ、RPAについて悩みを抱えている方は、ぜひ相談してみてください。
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