RPAのメリットとは?導入手順やポイント・注意点も解説
今、業界を問わず、さまざまな企業で注目されているRPA。業務効率化を目的に導入する企業が増えていますが、企業活動を行ううえで具体的にどのようなメリットがあるのか、皆さんはご存知でしょうか。実はそのメリットというのが、RPAが日本社会の抱える大きな課題を解決する手段のひとつとされている、理由でもあります。ここではまず、RPAを導入することで企業にもたらされる効果はどういったものなのかを紹介します。さらに、RPAを導入する前に抑えておきたい成功事例と失敗事例、導入のフロー、注意点までを解説します。RPAに関する基礎知識を持ったうえで、導入に向けた一歩を踏み出しましょう。
RPAとは?
RPAとは「Robotic Process Automation」の略語です。RPAを活用すれば、ファイルの複製やデータ入力などの手順が決まっている定型業務を、ソフトウェアに組み込まれたロボットで自動的に行えるようになります。
RPAは、レベルによって3つのクラスに分けられています。1つ目が「RPA(Robotic Process Automation)」で、2つ目が「EPA(Enhanced Process Automation)」、3つ目が「CA(Cognitive Automation)」です。EPAとCAは、RPAにAIを組み合わせたもので、より複雑な業務に対応することができます。現時点で一般にRPAと言われるものは、多くの企業が導入しているクラス1のRPAを指していると考えて良いでしょう。なお、クラス1のRPAの中には、プロセスの自動化にはいたらないRDA(Robotic Desktop Automation)と呼ばれるものもあります。これは、デスクトップ上で行われる作業単体を自動化することで、効率化を図るものです。
また、RPAはプログラミング知識がなくても利用できると言われることがあります。確かに誰でも手軽に扱えるツールも存在しています。しかし、プログラミング知識があったほうが、より業務の自動化がしやすく、有効的な活用が可能です。さらに、保守をする際やトラブル発生時には、プログラミング知識がとても重要になります。
RPA導入のメリット
RPAが定型業務を自動化できる便利なツールであることは、上記のとおりです。では、自動化することで、具体的にはどのような効果があるのでしょうか。ここからは、RPAを導入するメリットを5つ紹介します。
人件費の削減
人間の代わりにRPAが作業をしてくれるので、その作業にかかっていた分の人件費を削減することができます。特にRPAが得意とするような単純作業は、人間が行うと時間も手間もかかるようなものが多く、これを自動化できるメリットは大きいと言えます。
また、単純作業はストレスや心理的な負担が大きく、やりがいも感じにくい仕事ですが、その作業をロボットが代行することによって離職を減らし、結果として人材確保のコスト削減にもつながると考えられます。
サービスの向上
シナリオを作成して作業手順を記憶させれば、RPAはそのシナリオどおりに自動で繰り返し処理します。単純作業に関しては、人間が手作業で行うよりも、RPAのほうが圧倒的に早く処理することができます。業務スピードが上がり、作業時間が短くなるということは、それだけ顧客を待たせる時間が減るということです。RPAは、顧客対応のスピードを早めることにより、サービス向上に貢献します。
作業ミスによる損失を防ぐ
人間が手作業を行う場合には、慎重に行ったとしても、必ずと言っていいほど作業ミスが起こってしまいます。単純作業を続けていると、どうしても注意力が散漫になり、ミスが発生しやすくなります。しかし、作業ミスは、その後の業務を遅れさせ、顧客満足度を下げる原因にもなります。RPAなら、決められた手順にしたがって、正確に業務を行うことが可能。ヒューマンエラーによる損失を防ぐことができます。
生産性の向上
RPAは24時間365日稼働させることができます。処理スピードが早いうえに、稼働できる時間が長いため、人間では到底対応できないような膨大な量の業務も正確に処理することができます。さらに、RPAが作業を代行してくれるので、これまでその作業に割り当てていた労働力を、RPAがあまり得意としない企画の検討や業務改善といった、よりクリエイティブな業務に回すことができます。単純作業をRPAに任せて、人間はより付加価値の高いコア業務に集中して取り組むというように、RPAと人間でうまく分業することによって、生産性を高めることができます。
社員のモチベーションが上がる
上述したとおり、単純作業を日々繰り返すことは、社員とって心理的な負担となります。RPAが単純作業を代行してくれることで、社員はもっと自分のスキルを生かせる業務や、大きな価値を生み出すことができるクリエイティブな業務に従事することができるようになります。これにより、仕事に対するモチベーションが向上。やりがいを感じながら働くことができるので、仕事に対する姿勢が変わり、離職することなく企業に貢献してくれる可能性が高くなります。
RPA導入のデメリット
RPAを導入することで、さまざまなメリットがあることを紹介しましたが、逆にどのようなデメリットがあるかも紹介します。メリットだけでなく、デメリットも把握しておくことは、RPA導入を成功させるために重要です。
導入コストがかかる
当然ながら、RPAを導入するにはコストがかかります。導入時に支払う初期費用のほか、RPAツールを継続的に利用するためのライセンス料、サポートやメンテナンスにかかる費用、クラウド型のRPAであればクラウドの構築や利用のために費用が必要です。そういった費用に見合う、もしくはそれ以上のコストメリットが、RPAを導入することによって得られるかどうかは慎重に見極めなければなりません。
突然業務が止まる可能性がある
ITツールであるRPAには、システム障害やバグが発生した際に作業が止まってしまったり、システムの画面変更によってロボットが停止してしまったりするリスクがあります。システム障害やバグが発生する要因はさまざまで、予期するのは困難です。そのため、突然作業が止まってしまう可能性があります。また、負荷のかけすぎが原因でパソコンやサーバーがダウンしてしまった場合には、作業中のデータや保存していたデータが消失してしまうリスクもあるので、安全に運用できるような対策をあらかじめ講じておく必要があります。
情報漏洩のリスクがある
RPAは社内のさまざまなシステムと連携することができます。RPAが行う作業内容によっては、メールや会計システムと連携することもあるでしょう。しかし、RPAはソフトウェアであるため、外部からの悪意ある攻撃を受けたり、不正アクセスを受けたりする可能性があります。そこでIDやパスワードが一度漏洩してしまうと、連携しているシステムにもアクセスされ、さまざまな情報が漏洩してしまう可能性があり、大きな損害につながるリスクがあります。そのため、セキュリティ対策機能を備えたツールを選ぶことが重要です。
間違いに気づけない可能性がある
RPAは、あらかじめルール化された作業手順に沿って、自動的に作業を繰り返していきます。人間であれば、作業の途中で間違いに気づいたときには、作業を止めることができますが、RPAは人間のようにその作業が妥当かどうかを判断せず、ひたすら処理を続けてしまいます。そのため、最初のルール化の時点で誤りがあった場合には、ずっと間違い続けてしまうという危険性があります。そのため、定期的にチェックをするなど、運用面でのルールづくりも必要です。
引き継ぎをする際に注意が必要
最初にシナリオを作成し、作業をルール化してしまえば、その後はRPAが自動的に業務を繰り返し実行してくれるので、担当者はRPAが行っている作業内容や手順を知らなくても良いと思ってしまいがちです。そのため、担当者が変わった際に、RPAの作業内容をきちんと引き継がないケースがあり、作業がブラックボックス化してしまう可能性があります。そうなってしまうと、システムの更新や入れ替えがあったり、作業手順の変更が必要になったりした際に、適切に対応できる人が誰もいないという状況が発生してしまう危険性があります。そのため、ロボットの設計書や作業手順書をしっかり管理できるような運用体制を構築することが必要です。
RPAが必要とされる理由
今RPAがさまざまな企業で必要とされている理由のひとつは、少子高齢化です。このまま少子高齢化が進むと、労働力人口がどんどん減少し、働き手不足になることは明白です。そのため、24時間365日稼働できるRPAが、人間に代わる労働力として期待されているのです。
また、別の理由として、働き方改革もあります。長時間労働の是正や働きやすい環境の整備など、労働環境を改善し、社員がそれぞれのライフスタイルに合った働き方ができる組織にすることは、企業にとっては大きな課題です。その点において、業務効率化を得意とするRPAは、残業時間の削減や短時間労働を実現可能にする課題解決策のひとつとして考えられています。
RPA導入による成功事例・失敗事例
RPAは自治体、金融業、製造業など、業界業種を問わず、さまざまな組織や企業で導入が進んでおり、成果を上げています。しかし、RPAは万能ではありません。ここでは、導入に成功したケース、失敗したケースを見てみましょう。
定型業務を自動化して労働時間の削減に成功
ある保険会社では、契約時の申し込み情報が入ったファイルからデータを転記し、基幹システムに登録する作業や、保険金請求手続きの際に、その内容を基幹システムへ登録する作業など、人間が手作業で行っていたデータ入力作業をRPAによって自動化。年間で数万時間という労働時間削減に成功しています。また、RPAを夜間に稼働させることで、始業時間までに前日分のすべての処理が完了。担当者が早出して、作業をする必要がなくなったことで、働きやすさも改善されています。
RPAに向かない業務に導入しようとして失敗
RPAが得意とするのは、データ入力や業務レポートの作成など、毎日同じルールで繰り返すような業務です。それを理解せずに、さまざまな要因によって対応が変化するような複雑な業務を何とか自動化しようと試みた結果、RPAを設定するための最初のシナリオ作成が複雑化。RPA導入によって、業務を効率化することが目的であるにもかかわらず、導入に余計な手間がかかってしまい、導入段階で頓挫してしまうケースがあります。
RPAの導入フロー
RPAを導入する際、「何から手をつければ良いか分からない」ということもあるでしょう。企業規模や業務内容、組織内のルールや体制によって、導入の進め方はさまざまですが、ここでは基本的な流れをご紹介します。
現在の業務の棚卸
まず導入準備の第一歩となるのが、業務の棚卸です。社内の一つひとつの業務について、「業務の概要」「担当者」「使用しているシステム」「工数」といった要素を整理して、可視化します。これをすることによって、RPA導入がスムーズになるという面もあるのですが、それ以前に、属人化してしまっている、ブラックボックス化してしまっているなど、その業務自体が抱えている課題が顕在化してきます。そうすると、課題解決策として、RPAでなく、別の手段のほうが最適だと分かることもあります。
RPAを導入する業務の選定
これまでにも述べてきたように、RPAに適した業務と、そうでない業務があります。導入をしようと考えている業務が、RPAに適しているかどうかは非常に重要です。棚卸によって、整理された業務の中で、業務フローがパターン化しているような「定型業務であるか」、毎日もしくは毎週、毎月など、その業務が「定期的に発生するか」、さらに「大量のデータを扱う業務か」、「パソコンだけで完結できるか」などの基準に照らしながら、RPAが導入しやすく、かつ、より成果が上げられそうな業務を選定するようにしましょう。
導入するRPAツールの選定
次にRPAツールの選定です。RPAツールには、さまざまな種類があります。ツールを選ぶ際の基準として、自社が抱えている課題や自動化したい業務に適していることは大前提です。それ以外にも、価格だけでなく、運用のしやすさ、将来RPAをさらに活用しておきたいと考えている場合には拡張性、さらにベンダーのサポート体制の充実度なども鑑みて、慎重に選定する必要があります。また、無料で試用版を提供している場合もあるので、まずはそれを利用してみるのも良いでしょう。
RPAの導入におけるポイントと注意点
RPA導入のためのフローは前項までに記載したとおりですが、RPA導入を成功させ、その効果を最大化するために抑えておくべきポイントが4つあります。ここから1つずつご紹介します。
目標および指標の明確化
RPA導入の失敗事例の中には、「成果が出ているのかどうかが分からない」といったケースもあります。これは、導入段階で、目的や指標を明確にしていなかったことが原因です。RPA導入の目的には、「業務効率化」、「人件の削減」「ヒューマンエラー防止」「働き方改革の推進」などがあります。導入後の効果測定を行うためには、自社が何を目的にしているかを定め、現時点での残業時間、人件費、ミスの発生率など、その変化が比較できるように指標化し、さらに目標値を設定しておくことが大切です。
テスト導入
社内にRPAに精通している人がまだいない場合には、テスト導入として、スモールスタートをおすすめします。まずはひとつの業務に絞って、RPAの動作確認をし、運用ができるかどうかを実際に経験したうえで、それから少しずつ別の業務にも拡大していくことで、導入失敗のリスクを最小限に抑えることができます。また、RPAツールの中には、無料トライアル版を用意しているのもあるため、そういったものを利用してスモールスタートすることで、ツールの選定も同時に行うことができます。
RPA人材の育成
RPAを導入した後、より効果的に活用していくためや、トラブル時の対応をするためには、RPAの知識を身につけた人材を確保しておく必要があります。その方法として、導入の前にRPA担当者を1人ではなく、複数人でチームをつくっておくのも良いでしょう。まずはRPAに関する知識や他社の事例などを学んだうえで、実際に導入に着手。その工程を経験しておくことは、その後の運用においても非常に役立ちます。なお、RPAについて学ぶ方法としては、RPAツールのベンダーが行っている体験会、研修、ウェビナーがあります。
野良ロボット対策
野良ロボットとは、異動や退社などによって、管理者不在になったRPAロボットのことです。また、一度導入したものの成果が得られなかったなどの理由で、そのまま使われなくなったRPAロボットが野良ロボットになることもあります。野良ロボットは、不要な動作を行ってシステムに負荷をかけたり、別のRPAロボットの動作を邪魔したりと、トラブルの原因になります。その対策方法は、前項のRPA人材の育成ともつながりますが、社内に導入しているRPAを一元的に管理するチームをつくることです。現場担当者が異動した際の引き継ぎ、使用しなくなったRPAの停止処理など、RPA担当チームが管理することで、野良ロボットの発生を防ぐことができます。
まとめ
RPAのメリットだけではなく、デメリット、さらには運用するための体制づくりなどについても理解しておくことは、RPA導入を成功させるうえで重要です。ここで紹介した導入フローや注意すべきポイントなども参考にしながら、自社に合ったRPAツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。まずはスモールスタートをしたり、比較的安価なツールから試験的に活用してみたりと、導入コストを抑えつつ、RPAの効果を体感してみるのも良いでしょう。
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