ヒューマンエラーとは、人間が原因となって発生するミスや事故のことです。人間の行動には、大小問わず何らかの目的があります。その目的を達成するために人間は行動するのですが、その行動が必ずしも目的どおりの結果につながるとは限りません。ミスや事故といった形で発現してしまうことがあり、これがヒューマンエラーです。
また、人間の行動が原因と言っても、さまざまなケースがあります。たとえば、先入観や固定観念により、操作方法などを誤ってしまって発生するミスは、「誤認」によるヒューマンエラーです。肉体的もしくは精神的な疲労により、注意力が低下してしまって発生するミスは、「不注意」によるヒューマンエラーです。作業に慣れてしまい、いい加減な行動をした結果発生するミスは、「手抜き」によるヒューマンエラーです。これらを防止するには、それぞれのケースに合った対策を講じる必要があります。

前項で述べたとおり、ヒューマンエラーにはさまざまな原因がありますが、大きく分けると2種類に分類することができます。それは、「意図しない行動によるヒューマンエラー」と「意図した行動によるヒューマンエラー」です。
「意図しない行動によるヒューマンエラー」に含まれるのは、作業を行った本人自身の知識やスキル、経験といったものが不足していることで発生するヒューマンエラーです。また、コミュニケーション不足によって認識が違っていたり、勝手な思い込みがあったりと、「誤認」によって発生するものも、これに含まれます。本人としては、本来の目的に沿って適正に取り組んだつもりが、意図しない結果につながってしまうケースです。
「意図した行動によるヒューマンエラー」に含まれるのは、いい加減な行動が招く「手抜き」 によるものや、マニュアルを無視して勝手な行動をしたことで発生するものなどです。エラーが発生することは意図していないまでも、エラーにつながる可能性のある行動を意図的に行ったことが原因となるケースです。

ヒューマンエラーではないものとしては、故意に引き起こされたエラーがあります。前項の「意図した行動によるヒューマンエラー」に少し似ているのですが、より悪質性が高いケースです。エラーが発生するようにわざと作業手順を間違えたり、意図的に誤った情報を伝えたりしたものです。こういった事態は、犯罪と認定される場合もあります。
他にも、「誤認」も「不注意」もなく、マニュアルに沿って作業を行ったものの、結果的にミスになってしまったというケースもヒューマンエラーではありません。これは、そもそもマニュアル自体に誤りがあったり、機械に故障があったりと、人間の行動ではなく「モノ」に起因するミスです。ただし、そのマニュアル作成時に作成者が「不注意」によって間違えていたり、機械のメンテナンスで「手抜き」があったりと、ひとつ前の段階でヒューマンエラーが発生していることもあります。