中小企業こそRPAが必要な理由!導入メリットも解説

業務効率化ツールとしてRPAを導入し、成果を上げている大企業が増えています。しかし大企業に比べると、中小企業では導入が進んでいないのが現状です。その原因はどこにあるのでしょうか?ここではその原因を解説。さらにRPA導入のメリットや注意点など、中小企業がRPA導入を進めるうえで知っておきたい情報を紹介します。

そもそもRPAとは?

RPAとは、ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)の略語で、PC上で行う業務を自動化することができる技術のことです。データ入力や転記、レポート作成などの定型業務を、ロボットが人間の代わりに行ってくれるため、デジタルレイバーと呼ばれることがあります。仕組みとしては、人間がPC上で行う手作業をシナリオとしてロボットが記憶し、それを再現することで自動化しています。業務効率化や働き方改革に役立つツールとして、多くの企業で導入が進んでいます。

例えば、RPAを活用することで下記のような業務を自動化することができます。

  • 請求書から必要な情報を拾って、会計システムに入力する
  • 問い合わせメールから、その内容をExcelに転記する
  • 各店舗の売上データを、商品カテゴリーごとにまとめたレポートを作成する
  • あらかじめ設定しておいた残業時間を超えた従業員に、メールで通知する

中小企業こそRPAを導入するべき理由

大企業ではRPAの導入もしくは導入の検討がかなり進んでいる一方、中小企業ではまだそこまで浸透していません。しかし、導入のメリットを考えると、RPAは中小企業にこそ必要な技術なのです。ここでは、その理由を3つ挙げて説明します。

人手不足が今後一層進む

少子高齢化が急速に進んでいる日本では今、労働力人口の減少が社会的な課題になっています。これは業界業種、会社の規模を問わない問題ではあるものの、採用コストや人件費を捻出するのが難しい小規模な企業にとっては不利な状況です。
また、優秀な人材を集めたり離職率を下げたりするためには、従業員が働きやすい環境を整えることが有効です。しかし働き方改革への対応状況を見てみると、下記のようなデータがあります。

(働き方改革への対応について)既に「対応済みである」と回答した企業の割合は、従業員規模300名以下の中小企業で3割を超える。他方、「対応は困難」と回答した企業の割合は従業員規模が小さいほど高くなる傾向にある。

中小企業庁Webサイト「第1部 令和元年度(2019年度)の小規模事業者の動向」より引用

このように、より一層人手不足に陥る可能性がある中小企業には、人間に代わる労働力としてのRPAが必要です。

業務が属人化する傾向がある

大企業に比べて中小企業では人材が少なく、担当者が一人で特定の業務を行うことが珍しくありません。配置換えなどを含め、ほかの従業員が代わりにその業務を行う機会も少ないので、担当者以外に知識やノウハウが蓄積されず、その人にしかできない業務が生まれてしまいます。こういった業務の属人化は、担当者が離職した際の引き継ぎが難しくなり、業務がストップしてしまうリスクがあります。また、属人化してしまっているが故に、業務の見直しをすることがなく、非効率的なやり方を続けてしまっているケースも多くあります。
RPAを導入し、マニュアルを作ることで、誰がやっても同じ結果が得られる仕組みを構築しておくことが中小企業には必要です。

労働生産性が大企業に比べて低い

中小企業庁が毎年発表している「中小企業白書」を見てみると、「大企業の労働生産性の中央値が1,099万円であるのに対して、中小企業の労働生産性の中央値は540万円」というデータが示されています。つまり、大企業の労働生産性は中小企業の2倍以上ということなります。この傾向は、上位10%の企業の水準で比較するとさら顕著で、大企業では3,886万円であるのに対して、中小企業では1,367万円となっています。

出典:「2022年版中小企業白書」の「第1-1-73図 企業規模別の労働生産性の水準比較

上記のとおり、労働生産性向上は中小企業が成長するための課題のひとつであり、その手段としてRPA導入は有用であると言えます。

中小企業のRPA導入の推移

ICT市場専門のリサーチを行う株式会社MM総研の調査によると、中小企業のRPA導入率に関して、次のようなデータがあります。

【2018年6月時点】

RPA導入済みと回答した中堅・中小企業…17%
RPA導入を検討中の中堅・中小企業…33%
RPA未導入の中堅・中小企業…50%

【2019年11月時点】

RPA導入済みと回答した中堅・中小企業…25%
RPA導入を検討中の中堅・中小企業…44%
RPA未導入の中堅・中小企業…30%

出典:株式会社MM総研「RPA国内利用動向調査2020 プレスリリース

上のデータが示すように、中堅・中小企業では着実にRPA導入が進んでおり、多くの企業が今まさに導入を検討しているところと言えるでしょう。

大企業に比べてRPA導入が進んでいない理由

導入コストの高さ

着実に導入が進んでいるとはいえ、大企業に比べると中小企業の導入が遅れているのは事実です。日立ソリューションズは、これまでの導入支援の経験から3つの理由があると考えています。1つ目の理由はコストの問題です。ベンダーで販売しているRPAツールを利用する場合には、毎月もしくは1年ごとに利用料を支払うことになります。年間費用としては、安価なツールでも数十万円、高いものであれば数千万円かかります。
多くの中小企業では、資金面でそれほど余裕がなく、RPA導入を担当する人員の確保も難しいのが実情です。またRPA導入がうまくいかなったときのリスクまで考えると、一歩踏み出せないというのも理解できます。

費用対効果の低さ

2つ目の理由は、費用対効果の問題です。大企業であれば業務の種類も量も多いため、RPA導入に適した業務を見つけやすいでしょう。また、ある業務に導入したとして、処理する件数が多いのでそこから得られる成果も大きく、さらに横展開できる可能性があります。そのため大企業ではRPAの費用対効果が高くなる傾向にあります。一方中小企業の場合、RPAが代行する業務の量が少なければ、得られる成果は小さくなってしまいます。このデメリットがRPA導入を遅らせているのです。

運用の難しさ

3つ目に理由は、人員の問題です。ここ最近ほとんどの大企業では、社内システムの開発や構築、運用、保守などを行う情報システム部門が設置されており、サーバーやネットワークなどに関するIT知識を持ったエンジニアが複数名所属しています。RPAを自社で開発することができるほどのスキルを持った人材が、社内にいる会社もあります。それに対して、中小企業では情報システム部門がなかったり、あったとしても1人で社内システムを管理したりしていることが多くあります。そのためRPAの導入や運用に割ける人員に余裕がなく、RPA導入に踏み出せていないケースがあります。

RPAを導入することで得られるメリット

業務効率化が進む

RPAの基本的な効果として、やはり業務効率化を実現できることがメリットです。RPAを導入する段階で業務の見直しをすることにより、徹底的に無駄を排除することができます。さらにRPAで自動化することで、人間が手作業でやるよりも圧倒的に早く処理することが可能になります。また人間のように不注意によるミスなどをしないため、業務の品質が安定します。

労働力をコア業務に集中できる

RPAが得意としているのは定型業務です。その多くは単純な作業の繰り返しで手間がかかるわりに、会社の売上には直結しないような業務です。この定形業務をRPAに代行させることができれば、今までそこに割いていた貴重な労働力を別の業務に割り当てることができます。営業活動やマーケティング活動、サービス開発など、より収益増につながりやすいコア業務に労働力を集中することで、生産性向上を図ることができます。

コストが削減できる

前述のとおり、RPAはデジタルレイバーのひとつです。デジタルレイバーとは、仮想知的労働者とも呼ばれる、人間に代わる労働力です。RPAが業務を代行することで、その分だけ人件費を削減することができます。人間と違って24時間365日稼働することができるので、残業代もかかりません。また採用コストや教育コストもかかりません。もちろんメンテナンスは必要ですが、ずっと働きつづけてくれるため、人間を雇用する場合に比べてコストを削減することができます。

RPAを導入する際のポイント

業務フローの可視化

RPAを導入する際に、重要なのは事前準備です。具体的には、RPAを導入する業務を棚卸しして整理します。非常に手間のかかる作業ですが、RPA導入を成功させるためには、業務フローを可視化しておく必要があります。これの工程を省略してしまうと、せっかくRPAを導入しても、無駄な手作業が残ってしまう可能性があるからです。もし同じ業務を担当する人が複数いる場合には、それぞれのやり方を丁寧にヒアリングし、どの手順を自動化するのが良いかを考えましょう。RPAの効果を最大化できるように業務を整理し直して、それに合ったRPAツールを選ぶことが大切です。

試験的な導入

RPAを導入する際におすすめしたいのは、スモールスタートです。一気に全社展開するのではなく、まずは1つの部門の中の1つのチーム内だけで試験的に導入してみましょう。小規模で実施するほうが、目的や目標を明確にしやすく、成果検証もしやすくなります。RPAが自社でどれだけ機能するかを実感値として知るのがスモールスタートの目的です。またコストを抑えながら、RPA導入のノウハウを蓄積することができるというメリットもあります。得られたノウハウを生かすことで、その後の横展開がしやすくなるでしょう。

ベンダーの選定

RPAは導入して終わりではありません。効果的に運用を続けていくためにはメンテナンスが必要です。エラー発生時には、迅速な対応も求められます。中小企業ではなかなか難しいケースもあるでしょう。そこで重要なのが、ベンダーによるサポートです。何かあったときに迅速に対応してくれるベンダーを選んでおくと安心です。またベンダーによっては、社内の人材を育成するための研修を行っている場合もあるので、そういった支援が充実しているかどうかも確認するようにしましょう。
なお、RPAの運用に関して注意点をまとめたコラムがあります。ぜひ参考になさってください。

関連情報:コラム「RPA運用における成功とは?失敗しないためのポイントを解説」

RPAを導入する前に押さえたいリスクや注意点

RPAの特性を知っておく

RPAは業務効率化ツールとして非常に有用ですが、決して万能ではありません。手順が決まっていて、人間の判断が入らない業務を自動化するのは得意ですが、相手との関係性や状況によって対応を変えなければいけない業務は不得意です。画像認識や音声認識のAIと連携することでRPAが対応できる範囲が広がっているとは言え、できることとできないことをきちんと理解しておく必要があります。

既存システムとの相性を確認する

RPAがより効果を発揮し、生産性を高めていくためには、RPAと既存システムとの連携が重要になってきます。RPAを適用できる範囲が狭いと、効果も限定的になります。特に特定部門内の限られた業務だけでなく、さまざまなシステムを使用している他部門と横断的に動作するRPAを構築するには、各部門の既存システムとの相性を確認したうえで、RPAツールを選ぶようにしましょう。

費用対効果を考える

中小企業のRPA導入が大企業よりも進まない理由のひとつとしても説明しましたが、導入前には費用対効果を必ず検証しましょう。いくらうまく動作するRPAが開発できたとしても、コストがかかりすぎていては意味がありません。費用対効果を検証するうえで、大きな指標となるのはRPA導入によって削減できる人件費です。RPAの導入と利用にかかるコストに対して、削減できる人件費が高い業務を選ぶことをおすすめします。

運用体制を築く

RPAの運用を開始してから注意すべきなのは、野良ロボットです。野良ロボットとは、管理者不在のロボットです。例えば、これまで管理していた担当者が、退職の際にRPAのきちんと引き継ぎをしなかった場合、エラーが発生した際に誰も対処できなくなったり、誤作動に誰も気づかないまま誤ったアウトプットをしてしまったりする可能があります。マニュアルを作成するなど、運用していくための体制やルールを整備しましょう。

自社に合ったツールを選ぶ

既存システムとの相性以外にも、RPAツールを選ぶ際のポイントとして、自社に合っているかが重要です。自動化したい業務の複雑さや作業量によって、高機能なRPAにするのか、シンプルなものにするのかが変わってきます。また使いやすさも重要です。実際にRPAを扱う従業員のITリテラシーがあまり高くない場合、直感的に操作ができるようなツールを選ぶのがおすすめです。

RPAツールのおすすめの選び方

クラウド型かオンプレミス型か

RPAツールを選ぶ際は、種類や運用のしやすさなど、さまざまなポイントがあります。まず1つ目のポイントは、導入形態です。RPAツールの導入形態には、クラウド型とオンプレミス型の2種類あります。クラウド型は、名前のとおり、クラウド上にソフトウェアロボットをインストールします。導入コストを抑えることはできますが、対象範囲はWebブラウザー上の作業に限定されます。オンプレミス型は、自社サーバーやPCにソフトウェアロボットをインストールします。クラウド型よりも自動化できる範囲が広く、カスタマイズすることもできますが、導入コストは高くなります。

デスクトップ型かサーバー型か

上述したオンプレミス型の中でも、PCにインストールするものがデスクトップ型で、自社サーバーにインストールするものがサーバー型です。デスクトップ型は、PC上の作業を自動化するもので、PC1台から導入ができるため、スモールスタートがしやすいのが特長です。一方のサーバー型は、部門ごとに持っている情報を連携したり、部門横断的な作業をしたりすることができ、RPAを一括管理したい会社に適しています。

メンテナンスがしやすいか

エラー発生時などに、社内のエンジニアが即時対応できる体制があれば良いですが、現場でRPAツールを使用している従業員が自分たちで対応しなければならないケースもあります。プログラミング知識がなくてもメンテナンスができるように設計されているかどうかは、ツールを選ぶ際のポイントになります。エラー発生時に限らず、現場での使いやすさは、RPAツールを社内に浸透させていくためにも重要です。

サポートが充実しているか

運用を始めたばかりの時期は、エラーを含めたさまざまなトラブルが起こりやすく、業務への影響を最小限にするためには、適切かつスピーディーな対応が必要です。RPAの運用体制に不安を抱えている中小企業が少なくないことは説明しましたが、やはりベンダーのサポートが充実しているかどうかは重要です。どういったときに、どんなサポートが受けられるのかを確かめたうえで、ツールを選びましょう。

中小企業によるRPA導入の事例

ここからは中小企業のRPA導入事例を紹介します。

【ケース1】申し込み・問い合わせ対応業務

あるリース会社では、顧客からの契約変更の問い合わせがあった際に、電話を受けた営業スタッフが顧客管理リストから当該契約を検索して、手作業で変更の処理をしていました。
そこで新たに契約システムを構築し、顧客自身で契約変更ができるようにしました。そのうえで、契約システムと顧客管理リストを連携し、RPAによって自動的に顧客管理リストを更新できるようにしました。
これにより営業スタッフの負荷が減少。早期対応による顧客満足度が向上するという効果がありました。また、顧客が新規申し込みをしやすくなったことで、受注拡大にもつながりました。

【ケース2】請求書処理業務

レンタルや保険料、交通費などの請求書の処理代行業務を請け負うあるBPO事業者では、紙で送られてくる請求書を担当者がExcelの管理台帳に転記し、さらにそこから財務システムに登録して起票。起票したものと紙の請求書を管理者が突合して承認するという一連の処理を手作業で行っていました。
そこで、財務システムへの登録作業をRPAで自動化。毎月約500件ある財務システムへの登録に要していた作業時間(約90時間)分の人件費を削減することに成功しました。また、起票作業で発生するヒューマンエラーがなくなったことで、データの突合と承認がスムーズに行えるようになりました。

【ケース3】納品書データ登録業務

医療機器販売を行うある会社では、紙の納品書の情報を販売管理システムに手作業で入力していました。1日1,000件もの処理を4名で行っていたため、従業員には高い作業負荷がかかっている状態でした。また帳票によって発注番号の有無や商品コードの書き方にばらつきもありました。
そこでOCRで紙の納品書をデータ化。RPAを導入することで、データ検索からデータ登録、確定処理までを自動化しました。それと同時に、帳票のばらつき問題を解消。また、自動処理できなかったデータへのマーキングも自動化しました。これにより販売管理システムを操作する時間を、約70%削減することに成功しました。

RPA導入なら日立ソリューションズにお任せください

企業によって業務のフローや抱えている課題は千差万別です。そのためどのRPAツールを選定するかは、大きな悩みの種となります。日立ソリューションズでは、お客様からしっかりとヒアリングをしたうえで、それぞれに合ったRPAツールやサービスをご提案しています。
ここではまず、日立ソリューションズで取り扱っているRPAツールと当社ならではのサービスの一例を紹介します。

  • Automation 360(旧 Automation Anywhere Enterprise A2019)

    RPAが現場に浸透していくために重要なのは、使いやすさです。Automation 360は、プログラミング知識がなくてもRPA開発ができるように設計された開発画面を備え、現場の従業員が自分の業務を簡単に自動化することができるRPAプラットフォームです。

  • RPA業務支援BPOサービス

    RPAを導入する際には、どうしても時間や人的リソースが必要になってしまうため、通常業務と並行して行うのが難しく、それが原因でなかなか導入が進まないケースが少なくありません。RPA業務支援BPOサービスは、煩わしいRPA関連業務を日立ソリューションズが代行することで、RPA導入から全社展開までをスムーズに実現するサービスです。サポート対象のRPAは、Automation Anywhere、UiPath、Power Automate Desktopです。

日立ソリューションズにはRPA導入だけでなく、企業活動を支援するさまざまなシステム構築を手掛けてきた実績があります。そのため、既存システムとの効果的な連携を実現するRPAツールや導入方法をご提案することが可能です。

関連情報:「日立ソリューションズのRPA業務自動化ソリューション」

まとめ

大企業と比べるとまだ導入率は低いものの、RPAを活用する中小企業は着実に増加しています。利用するためのコストはかかりますが、削減できるコストもあり、生産性向上が実現できれば今よりも収益が増える可能性もあります。将来への備えとしても、投資としても、RPAの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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  • Automation 360(旧:Automation Anywhere Enterprise A2019)

    オートメーション・エニウェアが提供する最新のRPAプラットフォーム。
    あらゆる種類のユーザーのニーズに対応する、完全Webベース・クラウド対応のRPAプラットフォームです。

  • RPA業務支援BPOサービス

    RPA業務支援BPOサービスは、ロボット開発や社内問い合わせ対応、運用などのRPA推進部門の業務をまるごと代行するサービスです。 RPAの全社展開のボトルネックを解消し、RPA活用拡大を強力にサポートします。

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