RPAの画像認識って?
ほかの認識方法やメリット・デメリットについて解説

RPA導入を検討するうえで、「RPAについてきちんと理解しておきたい」と思われる方も多いのではないでしょうか。RPAに関する知識を身につけておくことは、導入はもちろん、その後の運用においても大切です。本コラムではRPAの仕組みの中の「画像認識」を中心に、そのほかの認識方法や形態、導入時のポイントなどについて解説します。

RPAについて

RPAとは、Robotic Process Automationの略語で、人間の代わりにPCを使った作業を自動で行ってくれるソフトウェアのことです。RPAは大きく分けて、「記録」と「実行」の2つの機能で、業務の自動化を実現しています。
まずは、人間が行う作業の手順を「記録」することでシナリオを作成します。一般的なRPAツールには、記録するための方法が2つあります。1つ目は、実際にPCを操作して作業を行い、その動作を録画するようにして記録する方法。2つ目は、シナリオ作成画面から動作を選択し、それをならべていくことで作業フローを登録する方法です。
そして、シナリオが作成できたら、それを「実行」することで、業務を再現します。任意のタイミングで手動実行することもできますし、例えば「毎日午前9時」というようにスケジュールを設定しておくことで、指定したタイミングで自動実行することもできます。

RPAを導入する効果

例えば、手作業で行うと時間も人手もかかってしまうようなデータ入力作業も、RPAで自動化すれば、人間が行うよりも圧倒的に早く処理することができます。また、人間のようにうっかりミスをすることもありません。
RPAを使うことにより、業務スピードと品質が向上します。さらに、RPAは24時間365日稼働することができるため、人間では対応できないような膨大な量の業務も処理することができます。
RPAが業務を代行してくれるため、そこに割いていた人員を減らして人件費を削減することができます。単純に人員を減らすのではなく、その分の労働力をRPAが代行できないようなコア業務に当てれば、売上増を図ることもできます。
このようにRPAをうまく活用すれば、業務を効率化することができるだけでなく、生産性を向上させることができるのです。

RPAの認識方法について

上記「RPAについて」の中で、RPAには人間の行うPC操作を録画するように記録して、シナリオを作成することができる機能があることを紹介しました。人間であれば目で見たり耳で聞いたりしながら、作業手順を記憶して再現することができます。それに対してRPAツールでは、「画像認識」、「オブジェクト認識」、「座標認識」という3つの方法で、認識しながら記録したり、実行したりします。どの方法を採用しているかはRPAツールによって異なります。

画像認識について

あらかじめ特定の画像を指定しておき、その画像と動作をロボットに覚えさせます。実行をする際には、ロボットがPCの画面上に表示されている画像と覚えた画像をマッチングし、記録されている動作を行います。これが、「画像認識」による自動化の仕組みです。
もう少し具体的に説明すると、ロボットは「検索」や「実行」といったボタンや、「Google Chrome」などのアプリケーションのアイコンのような画像を、光学文字認識(OCR)や画像認識によって識別することができます。そして、ロボットは認識した画像をクリックしたり、キーボード操作をしたり、あるいは画面上のデータの読み取りをしたりという操作を、信号としてPCに伝達します。これにより人手を介さずに自動的な処理ができるのです。この方法のメリット、デメリットについては後述します。

オブジェクト認識について

「オブジェクト認識」とは、アプリケーションやWebページなどの構造解析を行い、対象(オブジェクト)を検出する認識方法です。上記「画像認識」ではオブジェクトの色や形を認識していますが、「オブジェクト認識」は属性や構造を認識します。この認識方法をスーパーマーケットで売られている商品で例えると、スーパーマーケットの中にある「ドリンク売り場」の「Aという棚」に置いてある「B社」のミネラルウォーターという風に、その商品の見た目ではなく、置かれている場所やメーカーを認識するという方法です。
識別子の構造を指定することで、Webアプリケーションはもちろん、デスクトップアプリケーションを含んだ複雑な業務も自動化することができ、精度が高いというメリットがあります。

座標認識について

「座標認識」は、人間が実際にやっている作業を記録する際に、操作対象がPCのスクリーン上のどの場所にあるのか、画面上でマウスがどこからどう動いたのか、どの場所でキーボード操作が行われたかといったことを、「座標」として認識する方法です。横軸をX、縦軸をY、スクリーンの左上を原点(0,0)として、XとYの値(x,y)でその座標を認識します。また、スクリーン全体ではなく、アプリケーションのウインドウの左上を原点として、座標の範囲をウインドウ内に限定する場合もあります。
この方法は、シンプルな指定方法で、処理が高速というメリットがありますが、その一方で、レイアウトやウィンドウサイズが変わってしまうと正しく座標を認識できなくなってしまうというデメリットがあります。

画像認識タイプのメリット

非エンジニアでも使える

オブジェクト認識タイプのRPAツールを使う場合、自動化の対象となるアプリケーションの仕組みや構造などを理解しておく必要があり、非エンジニアが扱う場合にはRPAを導入する前に、IT知識を取得しておく必要があります。しかし、画像認識タイプであれば、人間がPC上で行なっている作業をそのままソフトウェアロボットに記録するだけで、シナリオを作成することが可能です。ITやプログラミングに関する知識がない方でも、直感的に扱えるというメリットがあります。そのため、実際に業務を行っている現場の従業員でも、自分たちで自動化を進めていくことができます。

どのアプリケーションでも使える

画像認識タイプは、人間がしているのと同じように、画面に表示されている対象の見た目で識別しています。そのため、人間がPCを見ながら行なっているアプリケーションの操作であれば、基本的にはどのアプリケーションを使った業務でも自動化することができます。アプリケーションを使った手作業が多い経理部門などでは、大幅な工数削減が期待できます。また現在の業務フローを変えずに、そのまま自動化したい場合にも適した方法です。
そのほかにも、画像認識の技術を使ったシナリオ作成機能は、フリーソフトや安価なものを含めて、多くのRPAツールに採用されており、ツールの選択肢が広いというメリットがあります。

画像認識タイプのデメリット

見た目の変更に対応できない

画像認識タイプのRPAは、画像を正確に検出できなければ正常に動作しません。そのため、記録してあった画像の色や形が変わってしまうと機能しなくなる可能性があります。デザインやレイアウトが頻繁に変わるWebサイトやアプリケーションが関わっている作業の場合には、注意が必要です。突然誤作動を起こしたり、作業がストップしてしまったりするリスクがあります。
また、ディスプレイの変化にも左右される可能性があります。デスクトップのテーマを変更したり、解像度が変わったりした場合にも、RPAが正常に動かなくなるリスクがあります。そのため、画像認識タイプのRPAを利用しているPCについては、デスクトップの表示設定はなるべく変更しないようにし、もし変更するときには必ずRPAへの影響を確認してください。

対象物が非表示だと機能しない

見た目に左右されてしまう画像認識タイプのRPAでは、オブジェクトが非表示になっていたり、別のアプリケーションのウインドウがオブジェクトの上に表示されて、オブジェクトが隠れてしまったりしていると検出することができません。RPAで自動処理をしている最中に、そのPCを使ってほかの作業を行うことはできないため、別のアプリケーションが立ち上がることはないと思われるかもしれません。しかし、何らかのエラーやイレギュラーな事態が発生した際に、ポップアップメッセージなどが表示されて、オブジェクトを隠してしまう可能性はあります。そういったことがないように、RPAに関係のないアプリケーションは閉じ、不要なポップアップが出ないようにしておきましょう。

再登録に手間がかかる

上記のとおり、アプリケーションをバージョンアップした際に、アイコンの色や形、レイアウトなど、デザインの変更があった場合、そのままではRPAが機能しなくなる可能性があります。そのため、再度ソフトウェアロボットにオブジェクトを記録する必要が出てくるのです。この手間が画像認識タイプのデメリットです。
RPAで自動化している作業に関わるアプリケーションをバージョンアップした際には、必ずアイコンやボタン、レイアウトなど、見た目の変更がないかを確認しましょう。変更があった場合には、速やかにRPAに登録し直してください。誤作動や突然のエラーを防ぎ、業務がストップしてしまうのを回避するための、重要なメンテナンスです。

認識方法の選び方のポイント

ユーザーのスキルに合わせる

RPAを導入する際に忘れてはいけないのは、実際に活用する人にとってどうなのかという視点です。上でも述べたとおり、画像認識タイプは誰も扱えるというメリットがあります。それに対してオブジェクト認識タイプや座標認識タイプは、それなりにIT知識が必要になるので、非エンジニアやRPAに初めて触れる人にとっては難しく、導入が失敗してしまう可能性があります。
IT知識があまりない現場の従業員が扱う場合には、画像認識タイプのRPAがまずは簡単です。しかし、自動化対象業務が増えたり、より高度な自動化を進めようとすると、デメリットを感じる部分が大きくなってきます。
精度やたくさんのロボットを作った後のメンテナンスの負荷を考えると、最初から精度の高い「オブジェクト認識タイプ」を選定し、社内ユーザーを教育して、スキルレベルを向上させることを考えたほうがよいでしょう。

対象業務に合わせる

自動化したい業務内容によっても、どのタイプのRPAを選ぶべきかが変わってきます。アプリケーションを操作するだけの簡単な作業を自動化するのであれば、画像認識タイプや座標認識タイプでも実現できるでしょう。しかし、アプリケーションの画面上の操作だけではなく、バックグラウンドでの処理を含むような複雑な作業を自動化するのであれば、オブジェクト認識タイプを選ぶ必要があります。ただし、仕様の問題で、オブジェクト認識タイプよりも画像認識タイプが適していることもあるので、どのタイプのツールを選ぶべきなのかはケースバイケースです。そのためにも、まずは自動化したい業務フローを可視化して、どの作業をRPAに任せるのかを明確にしましょう。

RPAサービスの提供形態について

ここまではRPAツールを認識方法の違いで区別してきましたが、サービスの提供形態によっても分けることができます。「サーバー型」、「デスクトップ型」、「クラウド型」の3種類があり、この提供形態もRPAツールを選ぶ際のポイントとなります。以下で説明する3種類の違いを参考に、自社の環境や自動化したい業務によって最適なものを選ぶようにしましょう。

サーバー型

サーバー型は、ソフトウェアロボットを自社のサーバーにインストールするRPAです。社内の部門をまたいで複数のシステムやクライアントPCを、横断的に使う必要のある業務を自動化することができます。
以下で説明するデスクトップ型やクラウド型に比べると、導入コストや利用料が高く、運用環境を構築するための時間も必要です。その一方、ロボットが稼働するのがサーバー上であるため、従業員が普段の業務で使っているPCには負荷かがかからないというメリットもあります。また、100台以上のロボットをサーバー上で同時に稼働させることもできるため、扱うデータ量が膨大な業務や、各部門が並行して行う業務を自動化することが可能です。大企業に導入されていることが多いRPAツールです。

デスクトップ型

デスクトップ型は、ソフトウェアロボットをPCにインストールするRPAです。インストールしたPCだけで完結できる業務を自動化することができます。現在最もポピュラーなRPAで、RDA(Robotics Desktop Automation)とも呼ばれています。上記サーバー型と比べると、導入コストや利用料が安価で、スモールスタートがしやすいのが特長です。情報システム部門やエンジニアがいない小規模な企業でも運用することができます。デメリットとしては、処理スピードや安定性がPCのスペックに依存してしまうため、膨大な量のデータを扱うのは得意ではありません。またロボットを実行している間は、PC上でほかの作業ができません。そのため、業務時間外に実行させる作業が必要になったり、RPA専用のPCを用意したり、ロボットを実行させるためだけに出社する必要が発生するなどの、手間が生じる場合があります。
RPAの導入や運用に不安がある場合、まずはPC1台にインストールし、その効果や社内で運用できるかを確認してから拡大していくのがおすすめです。

クラウド型

クラウド型は、自社で管理しているクラウド環境に、ソフトウェアロボットをインストールするRPAです。Web上のデータを収集してスプレッドシートにまとめる業務、宛先ごとに内容を変えてメールを送信する業務など、インターネットを介して行う作業を自動化することができます。
メリットとしては、運用や保守の負担が少ないことが挙げられます。ツールを販売するベンダーのサーバーを利用するため、自社でサーバーを用意する必要がありません。自動的にアップデートされるので、常に最新版を利用することができます。また、システム障害があった場合には、ベンダーが対応してくれます。一方、PC上にあるアプリケーションやデータなどを利用する業務には、対応できないというデメリットがあります。

RPAを導入するときのポイント

業務を整理する

RPAを導入するときに最も重要と言われているのは事前準備です。その中でも最初にやるべきことは業務の洗い出しです。RPAツールのことは意識せずに、実際の業務プロセスを書き出して、誰が見ても手順が分かるレベルにしましょう。このとき、RPA導入担当者と、現場で実際に業務をしている従業員が別の人である場合には、現場の業務担当者にヒアリングをする必要があります。作業手順はもちろん、どんなところに手間を感じているのか、ミスをしやすい作業がないか、などを確認すると良いでしょう。また、同じ業務を行っている人が複数いる場合には、それぞれのやり方に違いがある可能性があります。すべて洗い出して、自動化するのに最適な手順を導き出すことが大切です。

試験導入をする

RPAの効果に期待するあまり、一度に多くのRPAを導入してしまうのはおすすめしません。まずは特定の業務に絞って、RPAを試験的に導入するようにしましょう。さまざまな業務に適用しようとすると、関わる人数も多くなり、導入するための時間がかかりすぎてしまったり、途中で頓挫してしまったりするケースが珍しくありません。スモールスタートで導入して成功事例を作るほうが、その後の展開がしやすくなります。
RPAツールによっては無料トライアルができるものもあります。そういったものを活用して、導入や運用のイメージをつかんでから本格導入するのも良いでしょう。

サポート体制を確認する

導入した後にうまく運用ができるかどうかが、RPAの効果を最大化するためには重要です。エラー発生時にすばやく対応できるのか、どこまでのトラブルなら自社内で対応できるのかなどを想定し、社内のリソースを適切に見極めたうえで、運用体制を構築しましょう。
社内で対応しきれない部分については、外部のサポートを受ける必要があるため、RPAツールを選定する際には、ベンダーがどこまでサポートしてくれるのかを確認しておくようにします。ベンダーによってはRPA人材の育成を支援してくれるところもありますので、自社の状況に合ったベンダーを選ぶようにしましょう。

なお、RPAの運用に関しては、下記コラムで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

関連情報:コラム「RPA運用における成功とは?失敗しないためのポイントを解説」

RPA導入なら日立ソリューションズにお任せください

業務効率化ツールとして昨今注目されているRPAは、書籍や各種メディアで「プログラミング知識が不要」と表現されることがあります。確かにそういうツールもありますが、プログラミング知識がないと扱いづらいツールがあるのも事実です。企業によって自動化したい業務も違えば、作業工程も違っており、プログラミング知識がなくても扱えるツールで自動化できるものもあれば、そうでないものもあります。重要なのは、それを見極めることです。
日立ソリューションズでは、クラウド対応のため、導入時にサーバーを構築することなくロボット開発ができるRPAプラットフォーム「Automation 360(旧:Automation Anywhere Enterprise A2019)」や、チャットボット機能を活用することで、人間の判断が必要になる業務フローの自動化にも対応できる「Workato」、RPAツールと連携することで、ロボットの運用管理が効率化できる統合システム運用管理「JP1連携ソリューション for RPA」など、RPAの導入・運用を成功に導くさまざまなツールを販売しています。また、社内RPAユーザーの教育を含め、RPAに関わる業務をまるごと代行する「RPA業務支援BPOサービス」も提供しています。
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関連情報:「日立ソリューションズのRPA業務自動化ソリューション」

まとめ

RPAツールには認識技術の違いによって「画像認識タイプ」、「オブジェクト認識タイプ」、「座標認識タイプ」があり、さらに提供形態によって「サーバー型」、「デスクトップ型」、「クラウド型」があります。RPAを導入する際、どのツールを選べばよいかで迷ったときには、本コラムで説明したそれぞれのメリットとデメリットを参考にしてください。
そして、どのツールが自社に合うかを判断する際のポイントは、RPA自動化したい業務の内容と社内のリソースです。現状を把握したうえで導入計画を立案し、RPA導入を成功させましょう。

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