RPAでできることは?どこまでRPA化するべきかも解説

金融業界を中心に大手企業が導入を始め、最近では中小企業でも導入が進んでいるRPA。手間のかかる定型業務を自動化することで、さまざまな業務効率化が図れるツールと言われていますが、実際にどんなことができるのかご存じでしょうか。企業としては、できるだけ多くの業務を自動化したいところですが、RPAにも得意・不得意があり、すべての業務を人間の代わりにできるわけではありません。そこで、どこまで自動化できるのか、人間が関与しなければならない作業はないのかについて、具体例を挙げながら解説します。RPAで「できること」と「できないこと」をしっかり見極めて活用することが、導入を成功させるための近道です。

RPAでできること

RPAが得意とするのは、業務フローや作業手順が決まっている定型業務です。また、複数のアプリケーションを横断するような業務、大量のデータを扱う業務も得意です。しかし、そう言われてもなかなかイメージしづらいかもしれません。まずは、実際の企業活動の中で、具体的にどんな業務にRPAが導入できるのかを紹介します。

競合他社の価格調査

マーケティング活動の一環として、自社商品やサービスと競合する他社製品やサービスについて定期的に価格を調査するといったことがあります。この業務はRPAで自動化することができます。1日1回や週1回などの検索頻度を設定しておき、公式サイトやECサイトなどで販売されている競合製品の価格データを集めて、Excelに一覧表にしてまとめるといったところまでも自動化できます。自社製品の販売価格を見直すためのデータを自動的に集めることが可能です。

SNS上の口コミ収集

上記同様、マーケティング活動の一環としてさまざまなSNSに投稿される、自社や自社商品に対する口コミやコメントをチェックするといった業務も、RPAで自動化することができます。マーケティングの担当者が都度SNSで検索をするのは面倒ですが、定期的に自動で収集してExcelに蓄積していくことができます。また、キーワードを決めて、ポジティブな評価とネガティブな評価に分けることや、検知した際にメールで通知をすることも可能。自社商品の認知度や好感度について、データ分析をする際に役立ちます。

日次レポートの作成

ECサイトを運営している場合、売上向上のためのサイト改善をしていくには、サイトの閲覧者数、滞在時間、販売数、さらには広告プロモーションの投資対効果など、最新のデータを収集して、分析する必要があります。RPAなら、ECサイトおよび広告媒体の管理画面から、あらかじめ設定しておいた情報を取得し、定型レポートを作成することができます。たとえば、この作業を毎朝始業時間前に行うように設定しておけば、担当者が始業すると同時にレポートを確認し、分析や対応といった次のアクションに即座に移るといったことができるようになります。

勤怠管理

勤怠管理業務は毎月発生するもので、全社員分を一度に行う必要があるため取り扱うデータが多くなりますが、やるべき作業は決まっています。RPAを導入するにはぴったりな業務と言えるでしょう。勤務時間の集計、累計残業時間の確認、有給休暇の残日数の確認などを自動化することができます。さらには、集計したデータに基づいて給与計算を行い、振り込みを行ったり、明細書を作成するところまでをRPAで自動化することも可能です。

在庫管理

在庫切れによる販売機会ロスや過剰在庫による管理費増大などの問題を失くすためには、在庫管理を適正に行う必要があります。RPAを活用することで、あらかじめ設定しておいた時刻に、在庫数や出荷予定数といった情報を営業担当者に自動でメール送信することが可能。営業担当者は自宅でも、外出先でも、自分が取り扱っている自社商品の在庫状況を常に把握することができるようになります。これによって、適正なタイミングで、生産部門に対して生産指示を出すことができるのです。

顧客情報のシステム登録

新規顧客を獲得した際に、顧客情報を社内で使用している会計ソフト、顧客リストのExcel、業務管理アプリケーション、名刺管理アプリケーションなど、複数のシステムに手作業で登録している場合、同じ内容を何度も繰り返して入力する作業が発生します。RPAを活用すれば、専用フォームに顧客情報を一度入力するだけで、RPAがそれぞれのシステムにログインし、フォームに入力された顧客情報を自動で登録してくれます。これによって、手作業で起こるような登録漏れや誤った情報を登録するなどのミスを防ぐこともできます。

請求書の発行

請求書発行の際に、営業担当者が売上伝票を経理担当者へ提出し、販売管理システムに転記入力してから、請求書が発行されるといった手順を踏んでいる場合、RPAを導入することで、ミスもなく効率的な仕組みに変えることができます。たとえば、営業担当者が定型の売上伝票のファイルを共有フォルダにアップロードするだけで、RPAが自動で販売管理システムに売上データを転記し、設定しておいた日に発行された請求書をメールで受け取るといったことも実現可能。これを応用することで、請求書だけでなく、契約書や見積書など、さまざまな文書を自動で発行する仕組みが構築できます。

入金消込

取引先に対する請求情報と実際の入金情報と照合して、確認が取れ次第消していく入金消込。毎日口座の入金情報を見ながら、目視と手作業で対応するとなると、取引先が多くなればなるほど相当な労力が必要になります。これも、RPAを活用することで作業を効率化できます。取引銀行のシステムから入金情報を取得し、それと同時に社内の会計システムから消込情報を取得して、データを突合。確認ができたものを消込、未入金のものをリスト化するといった作業をRPAで自動化することができます。

問い合わせ対応

フォームからの問い合わせに対して、窓口となる担当者が一つひとつ確認して、回答を検討するというのは非常に手間がかかります。RPAであらかじめ対象となる問い合わせやメール返答内容を設定しておけば、自動的に返答をしつつ、問い合わせ内容を社内の業務管理システムに転記したり、内容に合わせて各部門の担当者に通知したりすることができます。問い合わせへの返信、問い合わせ情報の登録、社内共有を自動化することで、業務効率を向上させることが可能です。

メール配信

採用業務を例にあげると、会社説明会などのイベント告知、応募者への面接日程のリマインドなど、定型文のメールを送ることが多くあります。そういった定型メールの送信はRPAで自動化することができます。たとえば、面接日程の3日前にリマインドメールを送信すると設定しておけば、RPAが社内システムの登録された送り先リストから対象者を抽出し、自動でメールを送るといったことが実現可能です。業務負担を減らすだけでなく、連絡漏れや送信先を間違えるといったヒューマンエラーを防ぐことができます。

関連情報:RPA適用事例

そもそもRPAとは?

RPAとは、「ロボットによるプロセスの自動化」を意味する「Robotic Process Automation」の略語で、パソコンで行うバックオフィス業務やホワイトカラー業務を自動化できる業務効率化ツールのことです。システムやWebサイトからのデータ自動取得、取得したデータの転記、複数データを組み合わせたレポート作成などが得意です。その一方で、状況を見ながらその都度判断をしなければならないような業務、マニュアル化できないような業務は不得意です。ただし、AIを搭載した高度なRPAであれば、機械学習によって、ある程度の分析や判断を伴う業務も遂行できるようになります。

どこまでRPA化するべきか?

RPAにできることについて、いくつかご紹介しましたが、すべての業務をRPAで自動化できるわけではありません。RPAが不得意とする業務に関しては、人間が関与する必要があります。では、RPAがどこまで自動化できるか、例を挙げて説明します。

見積書作成の場合

たとえば、RPAを活用することで見積書を自動で作成することができます。営業担当者が顧客からの要望を受けてその内容をメールで送ると、RPAが自動的に社内システムに情報を登録。自社の商品名や単価、個数はもちろん、納期や配送料までを含めた見積書を作成し、社内承認の依頼までを自動化することができます。一つひとつ手作業でExcelファイルに打ち込む必要がないため、RPAで自動化することのメリットは大きいと言えます。
しかし、顧客との関係性や発注量を考慮してディスカウントをしたり、在庫調整のために値段を下げたりといった、営業担当者が個別に判断するようなことは一般的なRPAではできません。あくまで、見積書のベースはRPAで自動作成し、顧客に提示する前の最終調整は担当者が行うといったようにするのが、RPAの良い運用方法だと考えられます。

交通費精算の場合

交通費精算においては、従業員からの申請内容について、適正なルートなのか、金額が正しいのかを確認する必要があります。申請されたものを、経理担当者が一つひとつ調べてチェックするというのは、とても手間がかかる作業です。RPAを導入すれば、申請内容に基づいて自動で経路検索をし、もっとも金額の安いルートか、金額に間違いがないかを確認することができます。
しかし、その当日の交通事情や営業活動を行ううえでの判断などで、最安値ではないルートを使っている場合もあり、RPAがそこまで推し量るようなことはできません。RPAには申請内容の一次チェックを任せて、一次チェックにひっかかったものについては、経理担当者が申請者に確認するなどして、判断をするといった運用フローが良いでしょう。

関連コンテンツ:RPAと人の判断を入れた自動化を実現できるWorkatoの違い

RPAのメリット・デメリット

上記のとおり、RPAにもできること、できないことがあることを知っておくことは重要です。さらに、導入するメリットだけでなく、デメリットもあることも頭に入れておきましょう。

メリット

ここまでに例示したもの以外にも、RPAにできる業務はまだまだ多く、ほとんどの企業にとってRPAは有用なツールだと考えられます。RPAをうまく活用すれば時間のかかる手作業を自動化し、大幅に労働時間を削減することができます。その結果、面倒な単純作業から解放されて、コア業務に注力できることは従業員にとってメリットです。また、人件費を削減できること、長時間労働を防ぎ、社内の労働環境改善ができることは企業にとってのメリットです。さらに、手作業では避けることのできないヒューマンエラーをRPAを活用することで防止できたり、人間よりもはるかに速いスピードで処理ができたりと、RPAを導入・活用することにはさまざまなメリットがあります。

デメリット

メリットの多いRPAですが、それゆえのデメリットもあります。メリットにひかれて、多くの企業が自社内の業務をRPAで自動化し、業務効率向上をさせたいと考えます。その際に、RPAが得意なことと苦手とすることの切り分けを考えずにすべてを自動化しようとしてしまうのが、ありがちな失敗パターンです。複雑なシナリオ設定をすることになってしまい、導入するための労力がかかりすぎたり、エラーが頻発して逆に業務効率が悪くなってしまったりするのです。面倒な仕事を減らすのがRPA導入の目的だったはずが、RPA導入によって仕事が増えてしまっては、本末転倒と言わざるを得ません。一度に多くのRPAを導入するのではなく、RPAの特性をつかみながら進めましょう。

まとめ

AIを搭載した高度なRPAなら、判断を伴うような業務の遂行も可能になってきていますが、一般的なRPAは、あくまでも設定されたシナリオに沿って自動で処理をするツールです。RPAで何もかも自動化しようとするのではなく、できることとできないことを理解し、人間がフォローすることも含めて、RPAの運用フローを設計するようにしましょう。それが、RPA導入を成功させるためのカギです。

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