定型業務とは?メリットや効率化のポイントを徹底解説
現在さまざまな分野の企業で、働き方改革や生産性向上を実現するための方法として、業務内容の見直しや効率化が図られています。その際、主に見直しの対象となっているのが「定型業務」と呼ばれる業務ですが、「定型業務」と「非定型業務」の違いはご存知でしょうか。ここでは「定型業務」という言葉の意味から、業務を効率化するための具体的な手順まで分かりやすく解説します。
- ※本コラム記載の情報は2023年1月時点のものです。
目次
定型業務とは?
まずは言葉の定義から確認しておきましょう。定型業務とは「全体の流れや作業手順が定まっている業務」のことです。また、プロセスが明確に定められているということは、単発的なものではなく、「何度も繰り返して発生する」という性質を持った業務でもあると言えるでしょう。そのため、ルーティン業務と呼ばれることもあります。業務内容がより細かく定型化され、業務が発生するタイミングや納期が固定されていたり、担当者が決まっていたりすることもあります。ただし、定型業務は誰でもできる単純作業であることがほとんどである一方、企業全体の事業活動の基礎となる部分でもあり、これを完全になくすことはできません。そこで、人が手で行っている定型業務をIT技術によって自動化することで、業務効率化および生産性向上を実現しようという取り組みが、昨今さまざまな分野の企業で活発に行われています。
非定型業務との違いとは?
文字どおり、定型業務に該当しないものが非定型業務ということになります。定型業務とは反対に、手順が明確に定まっておらず、その都度判断をしながら思考力や創造力を駆使して対処する必要がある業務のことです。たとえば、相手やその場の状況に合わせて臨機応変に対応しなければならない折衝業務や、各々が抱えている異なる課題に合わせて最適な提案が求められる企画業務などは、非定型業務に該当します。
こういった性質の違いから、定型業務であればマニュアルを作成することができますが、非定型業務はマニュアルを作成することが難しいという違いが生まれます。
プロジェクトとの違いとは?
定型業務と相対するものとして、非定型業務ではなく、プロジェクトという言葉が用いられることがあります。プロジェクトとは、ある目的を達成するために臨時的に構成される組織やその業務のことです。
定型業務との違いを確認しておきましょう。まず業務を行うメンバーに関して、定型業務ではある程度決まった人が毎回担当するのに対して、プロジェクトでは状況に応じて適任と思われる人が選出されるため、一定ではありません。また業務を行う時期に関して、定型業務は毎週○曜日や月末など発生するタイミングが決まっている、いわゆる定常業務であることが多いのに対して、プロジェクトはその都度発生し、目的を達成したら終了します。定型業務とは異なり、業務の流れや手順が明確に決まっていないプロジェクト型の業務は、非定型業務のひとつと言えるでしょう。
定型業務の具体例一覧
定型業務の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 請求書や注文書、納品書、送り状といった伝票の作成
- 各種伝票受領後の入力作業
- 経費精算や給与計算といった事務作業
- 会計システムへの入力作業や振込作業
- 週次レポートや月次レポートといった報告書の作成
- 売上データの集計作業や集計後の転記作業
- 申し込み書の転記作業
- メールマガジンの送信作業
- 各種書類の印刷やファイリングといった事務作業
- オウンドメディアやSNSでのコンテンツ公開作業
業界業種を問わず、ほぼすべての企業で何らかの定型業務が発生しています。
また、上記は業務が発生するタイミングがある程度決まっている、もしくは決められるものですが、タイミングが決まっていない下記のような定型業務もあります。
- ID発行やPC手配など社員の入退社に関わる業務
- フォームからの申請対応業務
これらも時期こそ不特定ですが、作業内容は決まっており、マニュアルに沿って行われることが多い定型業務です。
業務を定型化することのメリット・重要性とは?
定型業務を自動化することが業務効率化の一手段として認識されていますが、そもそも定型化すること自体も業務効率化につながっています。それは、業務を定型化することで下記のようなメリットがあるからです。
- プロセスを可視化し定型化することで、各作業の仕事量を正確に割り出すことができるため、仕事の割り振りや人員配置が最適化できる
- 定型化することで、作業時間をあらかじめ見込むことができるため、残業時間を削減することができる
- 定型化すると同時にマニュアルを作成することで、人による作業内容のバラつきをなくすことができる
- ミスや漏れが発生しにくくなるため、業務品質が向上する
- 「担当者しかできない」といった状況をなくすことで、退職や人事異動の影響を受けなくなる
前項でも述べたとおり、定型業務の多くは繰り返し発生するもので、なおかつ、事業を行ううえで必ず発生するものです。定型化して効率化することは、将来にわたって効果があるため、非常に重要と言えるでしょう。
さらに今後は、日本社会全体が労働力不足に陥ると予測されており、人材確保が難しくなります。その際、個人のスキルを問わず、正社員でなくても同じように業務を遂行できるようにしておくという点においても、定型化は重要です。
業務を定型化することのデメリットはある?
定型化する際には、業務内容を丁寧に洗い出して整理していく必要があります。言い換えるならば、定型化すること自体に手間と時間を割かならければならず、デメリットのひとつと言えるかもしれません。
また、業務を定型化することで従業員の行動が固定化して、考え方まで凝り固まってしまう可能性はあります。新たな意見やアイデアを受け入れにくくなってしまい、業務改善がそれ以上進まない状況に陥るリスクがあります。
定型化された業務を行う従業員にとっては、「マニュアルが作成されたおかげで、仕事が楽になった」と感じる人がいる一方で、「ルールが多くて煩わしい」「ルーティン作業で退屈だ」と捉える人もいるでしょう。モチベーションの低下は退職につながる恐れがあるほか、企業全体の生産性にも関わる問題です。定期的に配置転換をするなど、現場が硬直化しないように対処する必要があります。
定型業務を効率化する方法とは?
上で述べたとおり、定型化すること自体が業務効率化につながる方法のひとつなのですが、ここからは定型化した業務をさらに効率化するための方法について説明していきます。
具体的には、以下の4つのステップで行います。
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業務の見える化
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課題の洗い出し
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改善方法の検討
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試験運用
定型業務は非定型業務に比べて、やるべきことが定まっている分、効率化しやすいという特徴があります。手間や時間の無駄をできるだけなくして効率化し、生産性向上をめざしましょう。
関連情報:コラム「業務効率化とは?注意点や推進するためのポイントは?」
1.業務の見える化
最初のステップとして、業務のフローや作業手順を可視化します。可視化することで、解消すべき無駄が発生していないかなど、業務遂行をするうえでの課題を見つけやすくなります。
可視化するための方法として、ここでは2つ紹介します。
方法その1:作業手順書を作成する
作業手順書とは、実際の作業工程順に沿って、作業内容や担当者をまとめたドキュメントのことです。作成する際には、実際にその作業を担当している人から詳細にヒアリングし、抜け・漏れのないようにすることが大切です。また誰が読んでも理解でき、その業務を再現できるようにするため、客観的で分かりやすい文章にすることを意識しましょう。
方法その2:フローチャートを作成する
フローチャートとは、業務の流れを図式化したものです。作業手順書に比べて、直感的に理解しやすいということと、フローの分岐点や条件を分かりやすく表現できるという特徴があります。作業手順書と同様、抜け・漏れのないようにすることが大切です。
繰り返し行ってきたがゆえ、普段感覚的に行っている作業も多くあると思います。それらを細かく言語化するのは案外難しいものですが、見える化は、業務効率化のためのファーストステップとして非常に重要な工程ですので、丁寧に行うようにしましょう。
2.課題の洗い出し
見える化ができれば、次は課題の洗い出しを行います。ムリ・ムダ・ムラが発生してしまう要因となるものがないかを、下記のような観点でチェックします。
- 作業ミスや遅れが頻繁に起こっている作業はないか
- その作業を行うために最適な従業員が担当しているか
- 本来必要でないものの、慣習的に行っている作業はないか
- 業務のプロセス、もしくは、一つひとつの作業の手順が適正か
- 同じ内容の作業を別々に行っていないか
- ITツールを活用することで手作業を削減できないか
長年同じように繰り返してきた業務の場合、課題が見えづらくなってしまっているものです。本当に必要な作業なのかを一つひとつ検証していきましょう。
3.改善方法の検討
課題が見つかったら、具体的な改善方法を検討します。一つの課題に対して、解決策が一つとは限りません。また、ほかの課題を同時に解決できる方法もあるかもしれません。まずは考えられるものを書き出してみましょう。このとき、ECRSというフレームワークを利用するのがおすすめです。ECRSとは、業務改善を図るために検討すべき順番と視点を示したもので、下記の4つの視点の頭文字をとった言葉です。「イーシーアールエス」もしくは「イクルス」と読みます。
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Eliminate(排除)
作業プロセスそのものをなくすことはできないか?
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Combine(結合)
別々の作業を一つにまとめることはできないか?
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Rearrange(再配置)
プロセスや作業する場所、担当者を入れ替えられないか?
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Simplify(簡素化)
手順やプロセスをより単純にしたり、自動化したりできないか?
それぞれ一例を挙げてみます。
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Eliminate(排除)の例
報告書の作成業務をなくす
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Combine(結合)の例
申請や承認をする際の窓口をひとつにまとめる
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Rearrange(再配置)の例
配送ルートを変更する
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Simplify(簡素化)の例
書類をフォーマット化する
E→C→R→Sは改善効果の大きい順に並んでいるため、この流れで解決策を検討することで、より効果的に業務改善を進めることができるでしょう。
4.試験運用
改善方法が決定したら、まずは試験的に運用してみましょう。本当に業務が効率化されているか、手順や作業内容を変更したことによって、新たな課題が発生していないかを確認します。この際に重要なのは、効率化できているかを検証するためには、改善前の状態との比較が必要です。改善前にどのくらいの作業時間がかかっているか、ミスが発生しているかなどをあらかじめ計測しておきましょう。
なお注意すべき点として、手順や作業内容を変更した直後は当然これまでと勝手が違うため、ミスが発生しやすくなります。改善の効果が現れるまでには少し時間がかかるということは見込んでおきましょう。業務内容によって異なりますが、1週間から1カ月ほどトライアル期間を設けて、効果検証を行いながら本格的に運用するかどうかを決定します。
定型業務を効率化のためのポイントとは?
定期的な業務見直しの機会
「一度効率化すれば終了」ではなく、定期的に見直すことでさらに効率化できる可能性があります。異動によって担当者が変わったり、導入したITツールに新しい機能が追加されていたり、業務を取り巻く環境は変わっていきます。できる限り、常に最適化できるようにしておきましょう。ただし効率化するための作業に日々追われてしまって、本来の業務が疎かになってしまっていては本末転倒です。半年に一度、もしくは、一年に一度は見直しを行うというように、あらかじめ計画しておくのが良いでしょう。
担当者目線の施策
多くの企業において、業務効率化を推進するのは各部署の管理者、もしくは業務効率化のために設立されたプロジェクトのメンバーです。しかし、改善策の実施による作業内容の変更の影響を最も受けるのは、実際にその業務を行っている現場の担当者です。改善を行う際に客観性は重要でありつつも、現場の担当者にとって負担が大きすぎるような変更は、効果が出にくくなってしまいます。担当者が前向きに取り組める改善策を、現場目線で考えるようにしましょう。
定型化できていない業務の定型化
ここまで定型業務を対象に効率化する方法を紹介してきましたが、それは定型業務に比べて、非定型業務の効率化が難しいからです。しかし、非定型業務だと思っている業務の中に、定型化できていないものがあるかもしれません。担当者がそれぞれ自分のやり方で進めているものでも、手順を決めたりフォーマットを作成したりすることで、非定型業務の中の一部だけでも定型化することができれば、それだけで効率化できる余地があります。さらに、Combine(結合)やSimplify(簡素化)によって、一層効率化ができる可能性もあります。業務全体を見て、徹底的に洗い出すことが重要です。
ツールの導入でさらに業務を効率化
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、人員の確保が難しくなったり、リモートワーク導入で従来の業務フローを変更する必要があったりと、ここ数年で企業は業務の抜本的な見直しをしなければならない状況になりました。これは外的な要因によって引き起こされた危機ではあるものの、これまでの業務を大きく改善し、効率化するチャンスと捉えることもできます。そこで、さまざまな業界の企業から注目されているのがITツールの活用です。ITツールを活用することでワークフローを変更したり、業務を自動化したりすることができます。その中でも特に効果が期待されているのがRPAです。RPAは、人間が手作業で行っている定型業務をソフトウェアロボットに再現させることで、業務を自動化することができます。詳しい内容は下記の関連情報をご覧ください。
関連情報:RPAとは
まとめ
前項で説明したとおり、さまざまな企業が、ITツールを活用した業務の見直しや効率化に取り組んでいます。その背景には、新型コロナウイルスの感染拡大だけはなく、日本の労働人口が将来的に減少していき、働き手不足に陥ってしまうという社会的な課題があるからです。ぜひ本コラムを参考に、定型業務についてしっかりと理解し、「ただの単純作業」だと軽んじるのではなく、むしろ効率化するための最優先課題として捉えて、業務の見直しに取り組んでください。
- ※本コラム記載の情報は2023年1月時点のものです。
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