業務プロセス可視化とは?
メリットや取り組む方法・ポイントを解説

昨今さまざまな企業がDXに取り組んでいますが、その目的は業務改善や業務効率化、その先にある生産性の向上です。その目的を達成するためには、闇雲にDXを推進するのではなく、まずは自社内の業務課題を見つけ出す必要があります。そこで重要になるのが、本コラムのテーマである「業務プロセス可視化」です。業務プロセスを可視化することのメリットや具体的な方法など、詳しく解説します。

業務プロセスの可視化とは一体なに?

「業務プロセスの可視化」とは、社内もしくは部署内で行われているさまざまな業務が、どういうプロセスを経てアウトプットまで至っているのかについて、その流れを言語化・図式化し、目に見えるようにすることです。
多くの業務では、ある程度進め方が決まっているものですが、それぞれ担当者の感覚で行っている部分も多く、プロセスをあまり意識していないこともあります。そのため、まったく同じ業務でも担当者によってやり方や順番が違っているというケースは珍しいことではありません。しかし、企業側から見たときに、そこには下記のようなリスクが伴います。

  • 実際には必要のないプロセスが発生していて、無駄な時間がかかっている
  • 担当者が異動や退職をすることになった際、業務が属人化していて、引き継ぎができない

「プロセスが可視化できていない=ブラックボックス化している」ということです。見えないところで業務に無駄が発生し、生産性を低下させている可能性があるのです。

業務プロセス可視化の重要性

業務を日常的に行っている現場の従業員にとって、「いつもどおり」の業務の中で無駄なプロセスが発生していることや、課題が隠れていることにはなかなか気づけないものです。そのため企業としては、前項で挙げたようなリスクを避けるために、業務プロセスを可視化することが重要です。
業務プロセス可視化は、業務改善や業務効率化、さらには業務自動化を実現するためのファーストステップです。プロセスを目に見えるようにすることで客観的に捉えることができるようになり、これまで言語化できていなかった問題点や見落としてしまっていた改善点が浮かび上がってきます。そうすることで、ようやく解決策を検討することができるのです。

業務プロセス可視化のメリットとは?

前項で業務改善を行ううえで、業務プロセスを可視化することが非常に重要であるということは説明しましたが、ここからは企業が業務プロセス可視化を行う具体的なメリットを紹介していきます。
「担当領域の明確化による作業効率の向上」「素早いボトルネックの特定」「属人化が解消され、ミスやトラブルに気づきやすくなる」「仕事全体のコストカット」「課題や問題の明確化」という5つのメリットについて、一つずつ確認していきましょう。

担当領域の明確化による作業効率の向上

業務プロセスを可視化することにより、誰がどういう業務をどのように行っているのかを、同じ部署内の上司や同僚はもちろん、他部署の従業員も把握できるようになります。それぞれが担当している業務の内容や領域が明確になることで、相互理解が進みます。また、プロセスが可視化できたらそれをマニュアル化しておきましょう。言葉だけでは説明が難しい場合には、図や表などを用いて、誰が見ても理解できる資料にします。そうすることで相互理解がより一層進み、担当領域や業務内容に関する認識のズレをなくすことができます。
部署内や部署間での相互理解が進むことで、何か協力を依頼する際にも、問い合わせ先が明確になるほか、コミュニケーションも円滑になります。その結果、作業を効率的に進めることができるのです。

素早いボトルネックの特定

業務は基本的に一連の流れの中で行われるものなので、その途中で何か問題が発生すると、その後のすべてのプロセスに影響がおよび、業務が停滞してしまったり、生産性が低下したりすることがあります。このとき、その原因となっている箇所のことを、瓶の首が細くなっているところに例えて、「ボトルネック」と呼んでいます。瓶に水がたくさん入っていたとしても、瓶の首が細いと出る水の量は少なく、全部の水を出し切るまでに時間がかかってしまいます。「全体の流れを滞らせてしまっている場所=ボトルネック」ということです。
ビジネスにおいては、このボトルネックを特定し、改善することが重要です。業務のフローが単純な場合には、ボトルネックを見つけることも難しくはありませんが、プロセスが多く複雑化している場合には、ボトルネックを見つけることも容易ではありません。そこで、業務プロセスの可視化が必要になります。一つひとつの業務を分解していくことで、ボトルネックを特定しやすくなります。

属人化が解消され、ミスやトラブルに気づきやすくなる

従業員が少ない企業の場合に多く見られるケースとして、特定の業務を一人の従業員がずっと担当していることがあります。こういった場合、業務の詳しい内容をほかの従業員が知る機会がなく、その担当者にしかできない業務になってしまいます。こういった状況を「属人化」と呼んでいます。
属人化してしまうと、もしも担当者が突然退職をしてしまった場合に、担当者の代わりをできる人材が社内におらず、その業務が完全に停止してしまうリスクがあります。また、作業手順に関しても担当者個人の判断に任せているため、無駄やミスが発生していたとしても、誰にも気づかれないままになってしまいます。
しかし、業務プロセスを可視化しておけば、担当者以外でも業務の内容や進め方を把握することができ、ミスやトラブルに気づきやすくなります。また、もしものときに担当者の代わりをすることができるようになります。

仕事全体のコストカット

たとえば、ひとつの事業部内で行われているあらゆる業務のプロセスを可視化すれば、その事業全体を行うために費やしている時間を把握することが可能です。そこから毎月どれくらいの人件費がかかっているのかを算出することができます。また、一つひとつの業務内容を正確に書き出すことで、人件費以外にも、具体的にどの業務にコストがかかっているのかを明らかにすることができます。
これにより、かかっているコストがその事業を行ううえで適正かどうかを検証することができ、コストがかかりすぎていた場合には、どの業務を見直すことでコスト削減ができるのかを分析・実行しやすくなります。

課題や問題の明確化

前項では、業務プロセスを可視化することで、人手をかけすぎている業務を明らかにし、人件費削減につなげることができると説明しました。それとは逆で、人手不足に陥っている業務も把握することができ、それと同時に「とにかく仕事量が多すぎる」「作業の進め方が悪い」「人材が適正でない」など、人手不足の原因となる課題を明確化することができます。これにより、人員を増やすことで業務がスムーズになり生産性を向上させるのか、作業効率が上がるようなツールを取り入れることで人手不足を解消するのかなど、それぞれの課題に対して適切な対応策を実施しやすくなります。

業務プロセス可視化の基本と企業の取り組み方とは?

うえで述べたとおり、業務プロセスの可視化は業務改善や業務効率化のためのファーストステップです。この工程をどれだけ丁寧に行うかによって、その後の業務改善の効果が大きく変わってしまうと言っても過言ではありません。ただし、プロセスを可視化することに無駄な時間を使ってしまっていては本末転倒です。そこで、ここからは業務プロセスを可視化する際に抑えておきたい基本的な注意点と具体的な方法を、6つのポイントにまとめて解説します。

1.細かい部分まで業務を洗い出す

業務プロセスの可視化に取り組む人が、その業務を実際に行う担当者ではない場合には、担当者にしっかりヒアリングすることが重要です。業務の内容はもちろん、普段行っている作業手順まで一つひとつ丁寧に聞き出して、できるだけ細かいところまで洗い出すようにしましょう。もし担当者が複数いる場合には、それぞれのやり方に違いがあるかもしれませんので、全員に確認するようにします。

2.部署内で会議を行い、問題や課題をまとめる

「1.細かい部分まで業務を洗い出す」では、担当者から直接ヒアリングをすることが重要だと述べましたが、それ以外にも、可視化したい業務を担当する部署内で話し合いをして、意見を出しておくことも大切です。普段の業務中で無駄だと感じていることや処理に手間取ってしまっていることを話し合うことで、一人ひとりの認識を部署内のメンバーに共有し、問題意識を持ってもらうことができます。さらに、業務改善に取り組めば、自分たちにとって今よりも働きやすい環境を手に入れられるなど、モチベーション向上にも役立ちます。

3.担当者による業務フローのマニュアル化

業務の洗い出しができたら、その業務のマニュアルを作成しましょう。全体のフローはもちろん、手順やルールを誰が見ても分かるように書いておくことで、作業を標準化し、ほかの従業員にも共有することができます。担当者が異動や退職でいなくなった際への備えにもなります。
また、マニュアルに沿って業務を行い、一定期間が経過したら改めて問題がないかを見直すようにしましょう。その際にはマニュアルを基準に改善の検討ができるため、改めてヒアリングする手間を省くことができます。

4.進捗表や業務棚卸表で管理し、周りに共有する

マニュアル以外に、業務内容と進捗状況を部署内のメンバーや他部署にも共有できる仕組みを作ることも業務プロセスの可視化につながります。具体的には、担当者以外の従業員が閲覧できるような進捗表や業務棚卸表を作成します。これにより業務実態が把握できるようになり、無駄なプロセスはないかを第三者の目線でチェックすることができます。また、担当者に過度な負担がかかっていないかを確認することができるので、過労などの問題を予防することにもつながります。

5.勤怠管理による社員の労働状況の把握

「4.進捗表や業務棚卸表で管理し、周りに共有する」の内容とも関連しているのですが、従業員の働き過ぎを予防するためには、勤怠管理を徹底して、労働状況を正確に把握する必要があります。タイムカードやICカードなどを使う方法が一般的です。長時間労働が常態化していないか、きちんと休みがとれているかなどを、労務管理を行う部署が管理することで、従業員の心身の健康をケアできるようにします。この労働時間の把握は企業として必ずやらなければならない義務なのですが、業務プロセスの可視化にもつながっています。無理のない業務プロセスになるよう見直しをしましょう。

6.ビジネスチャットの導入

業務プロセスの可視化に、ビジネスチャットを活用するという方法もあります。ビジネスチャットには下記のような特徴があります。

  • 話題ごとにチャット形式でやりとりをするため、後から一覧で読み返すことができる
  • グループを作ることで、資料などのデータはもちろん、必要な情報を共有しやすい
  • タスク管理機能を使えば、締め切り期限を従業員同士で共有できる

ビジネスチャットは基本的にオープンコミュニケーションツールです。メールよりも情報共有の面で優れており、いつ、誰が、どのように進めているのかが、その業務に直接関係のない人からも見えるようになります。

業務プロセスの可視化をするうえで着目すべきKPIとは?

業務プロセス可視化をする際にはKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。具体的な数字でプロセスの可視化ができるほか、その後の業務改善がどれだけ進んだのかを検証・評価する際にも役立ちます。
ここからは、KPIを「業務時間」「残業時間」「納品までのリードタイム」で設定した場合のメリットなどについて、それぞれ解説します。

KPI①:業務時間

1つ目は、「業務時間」をKPIに設定する方法です。たとえば、同じ業務であったとしても、担当者によって業務完了までにかかる時間は異なりますが、業務時間に着目して実際の労働時間や進捗状況などのデータを集めることで、それぞれのプロセス遂行に必要と思われる時間をおよそ割り出すことができます。これにより、必要以上に時間がかかりすぎているプロセスを見つけ出すことが可能です。また、「業務量が過度に多いから」「人員配置が最適でないから」など、時間がかかっている原因を突き止めることにも役立ちます。原因を分析することは、その後の改善策が変わるため非常に重要です。
業務プロセスを可視化し、改善策を実施した後は、その業務を遂行するために要する時間を何時間短縮することができたかで評価します。業務効率や生産性の変化の度合いを計測することができます。

KPI②:残業時間

2つ目は、「残業時間」をKPIに設定する方法です。残業時間に着目した場合、残業が必要になっている原因を突き止めることが必要になりますが、業務時間がかかりすぎている場合と同じく、「業務量が多すぎるから」「人員配置が最適でないから」のほかに、「業務フローの都合で定時以降に作業を行うことになってしまうから」といったことが原因になっているケースもあるでしょう。
また、残業時間をKPIにして業務プロセスの可視化を行うことは、業務自体の改善をして効率化するだけでなく、結果として残業時間を削減し、労働時間を適正にすることにつながります。働きやすい環境を整備することで、従業員のモチベーションが向上し、生産性が向上する可能性もあります。

KPI③:納品までのリードタイム

3つ目は、「納品までのリードタイム」をKPIに設定する方法です。納品までのプロセスの中で、時間がかかってしまっている箇所とその原因を見つけ出し、改善策を実施します。リードタイムを短縮することができれば、①の「業務時間」や②の「残業時間」の場合と同じく、業務効率化につながるのはもちろんですが、それに加えて、顧客満足度の向上につながる可能性があります。業務プロセス可視化を通して、ブランド力の向上や将来の売上増を図ることができます。

RPAを活用してスピーディーに業務自動化を実現

業務プロセス可視化に成功した後は、業務効率化のためにRPAの導入を検討しましょう。RPAとは、エクセルを使ったデータ入力業務など、人間がPC上で行う作業をロボットに記憶させることで自動化することができる業務効率化ツールです。日立ソリューションズでは、RPA業務自動化ソリューションとして「Automation 360(旧:Automation Anywhere Enterprise A2019)」というサービスを提供しています。
「Automation 360」は、RPAソフトウェアに関して世界中の企業で導入実績を持つAutomation Anywhere社が開発・販売している、最新のRPAプラットフォームです。RPAの開発から運用までを省力化することできます。

関連情報:Automation 360(旧:Automation Anywhere Enterprise A2019)

まとめ

企業が抱えている課題の中には、顕在化しているものだけでなく、顕在化していないものもあります。その中には、従業員の心身の健康を害する可能性のある問題や、顧客からの信頼を損なうリスクのある問題が含まれていることもあるため、できる限り早く課題を発見し対処する必要があります。その際に役立つのが、本コラムで解説した「業務プロセス可視化」です。
手間はかかりますが、ここで紹介したツールなどを活用しながら、ぜひ可視化に取り組んでください。発見した課題を解決し、従業員にとって働きやすい環境を整え、企業としての生産性向上をめざしましょう。

  • 本コラム記載の情報は2023年1月時点のものです。

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