ChatGPTをどう使う? 
ハイパーオートメーションにおける活用方法とは

エンタープライズ企業を中心に業務自動化ツールとしてRPAが浸透してきた今、AIやRPAなどさまざまな技術やツールを組み合わせることで業務を自動化するハイパーオートメーションという新たな概念が注目を浴びています。そんな中で登場し、同じくビジネス活用が期待されている生成AIサービスがChatGPTです。果たしてChatGPTは業務自動化に役立つのでしょうか。この記事では、ハイパーオートメーションにおけるChatGPTの活用方法や導入時の注意点などについて解説します。

究極の自動化「ハイパーオートメーション」とは一体なに?

ハイパーオートメーションとは、機械学習、パッケージソフトウェア、自動化ツールといったさまざまな技術とツールを組み合わせて、業務プロセス全体を自動化しようとする概念です。世界最大規模のITアドバイザリー企業であるガートナー社が2019年10月の「2020年版戦略的テクノロジのトップトレンド」の中で発表しました。業務自動化ツールの代表格であるRPAに比べて、ハイパーオートメーションでは自動化できる業務の範囲が広がるため、さらなる業務効率化や生産性向上が実現できる新しい業務自動化の概念として、さまざまな業界から期待されています。

ChatGPTとは

ChatGPT とは、アメリカのOpenAI社が2022年11に公開したAIチャットボットサービスです。GPTは「Generative Pre-trained Transformer」の略語で、インターネット上に存在する膨大な量のテキストデータを学習することで、言語を理解し、人間が使うような自然な言語を生成することができる大規模言語モデル(LLM)の一種です。ChatGPTは、名前にChatが付いているとおり、文章で質問したことに対して、適切な文章をチャット形式で生成してくれるのが特徴です。

ChatGPTは、まるで人間と話しているかのような自然な会話ができるほか、情報収集、文章の要約や翻訳、関数の作成、プログラムのソースコード記述、キャッチフレーズの作成、小説の執筆など、簡単なテキスト作成からクリエイティブ領域の文章創作まで行うことができます。

ChatGPTを業務自動化に取り入れるメリットとは

業務自動化にChatGPT を取り入れることのメリットは、RPAやiPaaSだけではできなかった業務まで自動化することが可能になることです。

業務自動化を実現するツールと言えば、現在多くの企業で導入されているRPAが挙げられます。RPAは、人間がPC上で行う作業の手順をソフトウェアロボットに記憶させることで、業務を自動化するというものです。また、RPAとしばしば比較されるものとして、iPaaSもあります。iPaaSとは、Integration Platform as a Serviceの略語で、オンプレミスかクラウドかという環境の違いを問わず、複数のシステムをまたいで業務プロセスやデータの連携を実現するクラウドサービスです。iPaaSはAPIを使って自動でデータ連携を行うため、業務自動化ツールの一つとされることがあります。

RPAとiPaaSに共通するのは、取り扱うデータが構造化データであるという点です。構造化データとは規則性を持ち、あらかじめ定められた構造となるように整形されたデータのことです。非構造化データはその逆で、整形されていないデータのことであり、業務の中で扱う多くのデータが非構造化データです。企画書や提案書といった文書データのほか、電子メール、画像、動画といったデータも、非構造化データです。この整形されていないテキストデータの処理を得意とするのがChatGPTです。つまり、業務自動化において、ChatGPTとRPAとiPaaSは互いに補完し合う関係にあると言えるのです。

ChatGPTを取り入れた業務自動化(ハイパーオートメーション)の例

RPAやiPaaSとChatGPTを併用することで、カスタマーサポートやマーケティングなど、さまざまな業務を自動化することができます。ここからは具体的にどんな業務を、どのように自動化することができるのかについて確認していきましょう。

カスタマーサポート:問い合わせ対応

Web上の問い合わせ窓口にChatGPTを導入。顧客からの問い合わせに対して、ChatGPTが自動で回答をします。さらに、問い合わせ内容の管理業務にRPAを導入することで、チケット管理システムにその内容を自動で入力。iPaaSでチケット管理システムとSlackを連携しておけば、新規チケット登録があったことをSlackで担当者に自動で通知してくれます。

このようにChatGPTを導入することで、オペレーターの業務負荷軽減できるほか、ChatGPTであれば24時間365日対応が可能になり、人件費削減も可能。また、対応スピードが早くなることで、顧客満足度向上にもつながります。

カスタマーサポート:顧客の感情分析

上記は、顧客対応にChatGPTを導入する例でしたが、サポート品質向上のための分析にもChatGPTを活用することができます。具体的にはiPaaSを活用し、顧客管理システムやチケット管理システムから、購買履歴や接触履歴などの顧客情報や問い合わせ内容といったデータを自動で収集、次にChatGPTで収集したデータをテキスト解析することにより、顧客の感情を分析します。

これにより隠れた顧客の満足度を知ることができ、対応の改善と満足度向上につなげることができます。

マーケティング

ウェビナーやWeb広告、メルマガといったマーケティング活動で獲得したリード情報から、構造化されていない住所情報などのデータを、ChatGPTで構造化。さらに構造化されたデータをRPAでCSV化して、リード管理システムに自動で登録させることができます。例えば、マーケティング会社から納品されたデータでは住所情報が「〒140-0002 東京都品川区東品川4丁目12番7号」となっていた場合、「郵便番号」「都道府県」「市区郡」「町名以下」に自動で分けて、自社の管理システムに登録するといったことが可能です。

RPAだけでは対応できない非構造化データを、ChatGPTを活用することで構造化データに変換することで、一連の業務を自動化できるため、より業務効率化を図ることができます。

受注分析、レポート作成

まずRPAを導入することで、顧客から届いた注文書をもとに受注入力作業を自動化することができます。さらにiPaaSを活用して、受注率や受注内容、受注に至るまでの時間、顧客情報など、さまざまなデータベースやエクセル、アプリケーションから必要なデータを取得。ChatGPTがそのデータを解析し、レポートを自動で生成します。
受注業務はもちろん、次のアクションにつながる分析や報告業務までのプロセス全体を自動化することができます。

ChatGPTを導入する際の注意点

業務効率化や人手不足解消など、生産性向上につながるユースケースが、さまざまな領域の業務で想定されるChatGPTですが、さまざまなリスクがあります。

1つ目が、情報漏洩のリスクです。ChatGPTが与えたデータを再学習し、意図せず流出してしまう可能性があるため、非公開情報や機密情報をChatGPTに入力しないようにしましょう。

2つ目は、情報の信頼性におけるリスクです。ChatGPTはもっともらしい回答を出力しますが、それが事実に基づく正確な情報かどうかはわかりません。デタラメな内容やデータに基づいてビジネスをした結果、自社や顧客に損害をもたらす可能性もあります。ChatGPTを過信しすぎずに、出力した内容を精査しながら活用するようにしましょう。

3つ目は、仕様変更や機能変更によるリスクです。ChatGPTはまだリリースされてから間もないサービスであり、発展途上と言えます。機能の追加や短いスパンでさまざまなアップデートがされているため、昨日までできていたことが突然できなくなる可能性もあります。ChatGPTを安定運用するためには、リリースノートを常に確認しておくことをおすすめします

まとめ

ChatGPTは生成AIの代表として注目を浴びており、人間にとって代わる存在というイメージから、何でもできる万能な技術だと思われるかもしれません。また、RPAもデジタルレイバーと呼ばれており、とりあえず導入さえしておけば、どんどん自動化ができて生産性が上がると考える方もいらっしゃるでしょう。しかし実際には、ChatGPTが得意とすることと、RPAが得意とすることは違っており、両者を併用することがハイパーオートメーションにおいては重要です。それぞれのツールの特性を踏まえて、自社での活用を検討してみましょう。

RPAやハイパーオートメーションに関して、日立ソリューションズではさまざまな業界での導入実績と活用ノウハウを持っています。どの業務に活用できるのか、どのくらい効果ができるのかなど、導入や運用における不安や悩みがあれば、ぜひご相談ください。

  • 本コラム記載の情報は2023年10月時点のものです。

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