【事例あり】人事・総務業務をRPAで効率化するメリットとは?成功のためのポイントも徹底解説
業務効率化ツールとして注目されているRPAですが、RPAが得意としているのはPCを使った定型業務の自動化です。人事部門や総務部門などが担っているバックオフィス業務の中には、決まった作業を定期的に繰り返すような業務も多く、RPAを導入する余地があると考えられます。本コラムでは、人事・総務業務へのRPA導入事例とともに、そのメリットや注意点について詳しく解説します。
目次
RPAの基本情報や活用するメリットは?
RPA(Robotic Process Automation)とは、ソフトウェアロボットを使って作業を自動化する技術のことです。仕組みを簡単に説明すると、人間が手動で行っているPC作業の手順をロボットに記憶させ、再現させることで自動化するというものです。RPAを活用すれば、手間のかかる作業を、人間が手動で行うよりも早く、正確に処理することができるので、業務を効率化することができます。また、人間の代わりに業務を行ってくれるため、新たな労働力になると期待されており、デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも呼ばれています。
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人事・総務業務とRPAの相性と活用例
RPAは業務を自動化できるツールですが、得意としているのは定型業務です。定型業務とは、作業手順が定まっていて、どう処理するかを都度判断する必要がない業務のことです。定型業務の多くは、毎日・毎週・毎月のように定期的に繰り返し行われる業務で、具体的には給与計算や経費精算、売上集計、週次報告などが挙げられます。人事・総務部門が担っている業務は定型業務が多く、RPAとの相性はよいと言えるでしょう。
そこで、以下では人事・総務業務でのRPA活用事例を紹介します。
人事査定用データの作成
IT会社であるA社では、全社員5,000人を対象に半年に一度人事査定を実施していました。人事に関連する各種システムを検索し、必要な情報を抽出して、既定のフォーマットに転記するという作業を、社員ごとに行っていたため、工数として30人日かかっていました。
そこでRPAを導入。システムからの情報抽出やフォーマットへの転記、さらに確定した査定資料を所属部門別にパスワードを付けてメールで送信するところまでを自動化しました。
これによって工数は6人日になり、労働時間の削減に成功。さらに、転記作業でのヒューマンエラー防止につながるほか、各社員の査定情報を作業担当者が閲覧しない状況をつくることができました。
長時間残業者リストの作成とメール送信
不動産管理会社であるB社では、長時間労働是正に取り組んでおり、長時間の残業を行っている社員に対して、その旨をメールで通知するとともに問診票への記入を依頼していました。さらに長時間残業者をリスト化し、対象者が所属している拠点ごとに上長にメールで送信をしていました。
この業務にRPAを導入。HR系のシステムから勤務時間や組織人事のデータを条件指定で抽出し、そこから長時間残業者を割り出してメールを送信するところまでを自動化しました。また、各拠点の上長へのメール送信も自動化。これにより作業時間をおよそ75%削減することに成功しました。
RPAで人事・総務業務を自動化するメリットとは?
RPAの一般的なメリットについて、冒頭で簡単に紹介しましたが、ここからもう少し詳しく解説していきます。
RPAを導入するメリットとしては「生産性向上やミスの削減」「社員がより価値の高い業務に専念でき、モチベーションが上がる」「人手不足解消」「コスト削減」の4つが挙げられます。これらのメリットを最大限生かすことで、「業務効率化」「生産性向上」「人手不足」といった、今まさに企業が抱えている課題に対して、RPAが解決策のひとつになると言えるでしょう。
生産性向上やミスの削減
人間が手作業で行う場合には、必ずヒューマンエラーが発生します。人間の能力はどうしてもその日の体調や心理状態に左右されてしまったり、作業をしているうちに疲れがたまって集中力が低下してしまったりするため、うっかりミスをしてしまいます。それに対して、RPAは記憶させた作業手順を、いつでも何度でも正確に繰り返します。最初の設定に間違いがなければ、人間のようなミスをすることがありません。それゆえ、RPAを導入するほうがミスなく、確実に業務を遂行できるというメリットがあります。
また、人間は労働時間に制限がありますが、RPAであれば24時間365日稼働することができます。なおかつ、人間よりもRPAのほうが、圧倒的に処理スピードが早いため、より多くの作業を処理することが可能です。短い時間で多くの成果物を生み出せるRPAには、生産性を向上させるというメリットがあると言えます。
社員がより価値の高い業務に専念でき、モチベーションが上がる
定型業務には単純作業が多く含まれており、それを毎日や毎週など繰り返し行うことで仕事に対するやりがいを見出せなくなってしまったり、ストレスが生まれてしまったりします。その結果として、離職をしてしまうケースも少なくありません。
しかし、RPAを導入すれば、社員を単純業務から解放することができます。さらに、単純作業に割いていた労働力を、より価値の高い業務に向けることが可能となります。ここで言う「より価値の高い業務」とは、人事部門であれば「採用活動」や「人事制度の設計」、「人材育成計画の立案」といったコア業務のことです。これらは非定型であることが多く、RPAで代替することができないため、RPAと人間でうまく分業できると考えられます。
RPAによって、社員を単純作業から解放し、コア業務に専念してもらうことで、仕事に張り合いが生まれて、モチベーション向上につなげることができるのです。
人手不足解消
現在日本では少子高齢化が進んでおり、労働力人口が年々減少しています。これは大きな社会課題であり、一朝一夕で解決できる事柄ではありません。すでに多くの企業が人手不足に悩まされており、今後さらに深刻化することは明らかです。限られた人材をいかに獲得するかで、企業同士が競い合うことになるでしょう。
しかし、この課題に対して、RPAが解決策のひとつになると考えられます。上記のとおり、人間が手動で行っていた作業をRPAに任せることができるため、RPAを新たな労働力として見なすことができます。冒頭でも少し触れましたが、デジタルレイバーとしてRPAを活用するのです。RPAで自動化できる業務はどんどんRPAに任せて、それ以外の人間にしかできない非定型業務を社員に任せることで、これまでよりも少ない人数で会社を運営することが可能となります。実際に、労働力人口が減少する未来社会でも事業を継続できる体制を整える準備として、すでにRPAを導入し始めている企業は多くあります。
コスト削減
上記のとおり、RPAは人間の代わりに業務を遂行でき、なおかつ、スピーディーで確実に作業を処理することができます。そのため、RPAを導入することで、手間のかかる単純作業に割いていた人件費を削減することができます。作業量が膨大であれば膨大であるほど、大幅な削減ができるというのは、大きなメリットと言えるでしょう。
また、RPA導入による社員のモチベーション向上が成功すれば、離職を防止することができ、人材獲得のためのコストを削減することにもつながります。
人事・総務の将来性 RPAの普及によって仕事はどう変わる?
人事・総務業務にはいわゆる事務作業が多く、RPAを活用することで、かなり業務効率化が進むと考えられます。しかし、人事・総務に従事する従業員が必要でなくなるわけではありません。RPAには苦手とする作業があり、AIと連携するなどして対応できる業務が拡大していくことは予想されますが、コミュニケーションを取りながら適宜判断をして業務を進めていくことに関しては、まだまだ人間のほうが優れています。そのため、人事・総務部門では、RPAで効率化する業務と人間が担当する業務の棲み分けが進み、各企業の状況に応じて、部門全体としての最適化が図られていくと考えられます。
RPA活用のためのポイントとは?
RPAにはさまざまなメリットがあり、活用の仕方によっては企業としての力を一気に高めることができます。ただし、その効果をより大きくするためには、どのように導入し、どう運用していくかが非常に重要です。
ここではRPAをうまく活用するためのポイントとして、「業務フローを棚卸する」「小さな業務から自動化をテストしてみる」「ベンダーのサポートを利用する」「RPA人材を育成する」の4つについて解説します。RPA導入を検討されている場合は、知識としてぜひ押さえておきましょう。
業務フローを棚卸する
RPAを導入する際には、まずどの業務に導入できるのか、どの業務が一番効率化できるのかを考える必要があります。そのため、人事・総務部門で行っている業務を一度棚卸しましょう。一つひとつの業務を洗い出し、作業内容と手順を細かく書き出していきます。RPA導入を進める担当者が、人事・総務部門以外の方の場合には、各業務を行っている従業員から丁寧にヒアリングすることが大事です。その際、従業員によって手順が異なる場合には、最適と思われる業務フローに標準化しておきます。
業務フローの棚卸作業は、非常に手間と時間がかかります。しかし、これをすることで日常当たり前にやってきた業務の中から隠れた課題が見つかったり、RPA以外の方法で効率化できるものが見つかったりすることもあります。業務改善を徹底的に行うためにしっかり取り組みましょう。
小さな業務から自動化をテストしてみる
業務フローの棚卸が完了し、RPA導入によって効率化ができそうな業務が見えてきたら、いよいよ導入です。ここで注意したいのが、一気に導入するのではなく、まずは小さな業務でテストするということです。なるべく早く業務効率化を実現したい気持ちもあるとは思いますが、もし想定したとおりに進まなかった場合には、会社の活動が一時的にストップしてしまう可能性があります。まずは他部門の業務にあまり影響の出ないような小さな業務にRPAを導入するようにしましょう。
また、テスト導入することによって、どのくらい手間が省けるのかが実感できるほか、運用していくための課題が見えたり、RPAツールと自社の相性を確かめたりするという意味でもスモールスタートがおすすめです。RPAツールに関しては、さまざまなベンダーが販売しており、機能や特長に違いがあります。テスト導入をすることで、自動化したい業務内容と合っているか、人事・総務部門の従業員自身が使いやすいかどうかを確かめることができます。
ベンダーのサポートを利用する
RPAが多くの企業で導入されている理由のひとつとして、プログラミング知識がなくても導入することができるRPAツールが世の中にたくさんあるという点が挙げられます。IT人材が不足している企業は多く、特に中小企業ではそういった人材を採用することが難しいケースもあります。そのため、画面上の操作だけでロボットを作成することができるなど、誰にでも扱いやすいRPAツールが各ベンダーから販売されており、人事・総務部門のITにあまり詳しくない従業員が主体となって導入することも可能です。
しかし、実際に導入してみると思ったようにロボットが動かなかったり、エラーが何度も発生してしまったりすることも珍しくありません。その際には、原因を究明したうえで対策を講じる必要があるのですが、ITに詳しくない人材だけで対応すると時間がかかります。最悪の場合、導入がそのまま頓挫してしまう可能性もあります。そういった事態を避けるために、ベンダーのサポートを活用しましょう。なお、サポートの手厚さは、ベンダーによってさまざまです。RPAツールを選ぶ際には、トラブル発生時のフォローが充実しているかどうかを確認しておくことをおすすめします。
RPA人材を育成する
前項で説明したとおり、プログラミング知識がなくても扱えるのがRPAの特長です。しかし、少し複雑な業務に導入したり、他部門への展開を進めたりするためには、RPA人材を社内に確保しておくほうがよいでしょう。もちろんベンダーのサポートを受けることで解決することも多いですが、困ったときにいつでも迅速に対応できるようにするには社内に知識を持った人材がいるほうがやはり安心です。
RPA人材を育成する方法は大きく分けて2つあります。市販されている教材を購入して独学で知識を身につける方法と、RPAツールを販売しているベンダーのサポートを受ける方法です。後者の場合、ベンダーが研修を実施していることがありますので、積極的に活用するようにしましょう。
RPAに限ったことではありませんが、人材育成には時間がかかります。導入前のタイミングから人選を行い、導入検討やツールの選定、ベンダーとのやり取り、運用などを実際に経験しながら、スキルと知識を身につけるようにします。運用開始時に不安がある場合には、最初だけ人材派遣などの外部リソースを活用しながら、社内人材の育成に取り組むという方法もあります。
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RPAプラットフォーム「Automation 360」
Automation 360は、世界中の企業への導入実績を持つオートメーション・エニウェア社が提供している最新のRPAプラットフォームです。人事・総務業務のみならず、さまざまな業界業種の企業ニーズに応えられるように設計されています。オンプレミスとクラウド、どちらの環境でも利用ができ、完全ウェブベースなのでクライアントインストールは不要。RPAのスペシャルだけでなく、各業務担当者が直感的に扱えるUIが特長です。
RPA推進業務代行「RPA業務支援BPOサービス」
RPA業務支援BPOサービスは、自動化する業務の選定からロボット開発、RPAの運用、社内の各部門からのRPAに関する問い合わせ対応に至るまで、RPA推進業務を丸ごと代行するサービスです。社内のリソース不足、知識やノウハウ面での不安といった課題があるために、RPAを導入したくてもなかなか実現できない企業を全面的にサポートします。人事・総務業務のみならず、RPAの全社展開を検討されている場合には特におすすめです。
日立ソリューションズの強みは、これまでの経験に裏打ちされた知識とノウハウで、各企業や部門の状況に合わせて、最適なRPA導入を実現できることです。また、導入後のサポートも充実しています。まずは気軽にご相談ください。
まとめ
活用例のところでも紹介したとおり、勤怠管理や人事に関わる情報の取得といった業務は定期的に発生し、なおかつ、フローも固定されていることが多いため、RPA導入にぴったりな業務です。また、従業員数が多ければ多いほど、作業量は膨大になり、ヒューマンエラーが発生するリスクも高まるので、それだけRPA導入の効果を得やすいと言えるでしょう。
本コラムで解説した導入時の注意点などを参考に、ぜひ人事・総務業務の業務効率化に取り組んでください。