経理業務効率化!
~RPA導入のメリットと成功のポイントを徹底解説

生産性向上を実現するための業務効率化ツールとして、昨今注目されているRPAですが、RPAが得意としているのは「定型業務の自動化」です。また、一般的な企業の中でPCを使った定型業務が多いのは経理部門です。そこで、本コラムでは経理業務にフォーカスを当て、RPAを導入するメリットやその後の運用も含めた成功のポイントを、事例を交えて詳しく解説します。

RPAの基本情報やメリットとは?

まずRPAとは何かについて、簡単に説明しておきましょう。RPAとは、Robotic Process Automationの略語で、PC作業を自動化できるソフトウェアロボット技術のことです。PCを使って人間が行う作業をソフトウェアロボットが再現できるように、その手順を記録することで、自動化を実現します。データ入力や基幹システムへの転記といった事務作業など、さまざまな定型業務をRPAが人間に代わって行ってくれるため、仮想知的労働者とも呼ばれており、労働力を削減できるというのが最も大きなメリットです。

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経理業務とRPAの相性と活用事例

経理部門には、各種伝票の起票や社内システムへの入金データ取り込みと消込作業といった定型業務が多くあります。一方で、上記のとおり、RPAは作業手順を記録して再現するため、手順が決まっている定型作業を得意としており、経理業務とRPAの相性は非常によいのです。

また、RPAはソフトウェアロボットであるため、ヒューマンエラーを起こしません。人間は長時間作業を行うと、どうしても集中力や体力が低下し、ミスを起こしやすくなります。特に単純な作業であれば、モチベーションも維持しにくく、その傾向は強くなります。正確性が重要な経理業務に、RPAはぴったりだと言えるでしょう。

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コラム「部門別RPA活用事例をご紹介!人事・総務・経理・営業・開発部門に加え、工場や生産現場などの実例つき」

事例その1
<売上の突合業務>

商業施設を運営するA社は、各テナントから複数のフォーマットの紙で送付されてくるPOSデータと、別のシステムに入力されている売上データが一致しているかを目視で確認しながら突合業務を実施。その後、確定した売上データをもとにに売上報告書を作成して、各テナントにメールで送信していました。

そこで、紙のPOSデータをまずOCR(光学的文字認識)でCSV化し、そのCSVと別システムの売上データとをRPAで突合することで、一連の作業を完全に自動化しました。さらに、各テナントへの確定した売上データのメール送信までもRPAで自動化。パート200名で実施していた突合せ作業を、最終的には数名で行えるようになりました。

事例その2
<請求書処理業務>

経理業務の代行などを行うBPO事業者のB社では、レンタル、リース、保険料、交通費などの請求書の処理代行業務を行っているものの、月当たり約500件処理する必要があり、担当者の大きな負担となっていました。

顧客から送られてきた紙の請求書をエクセルの管理台帳に転記し、管理台帳から財務システムに手作業で登録するという作業のうち、システムへの登録作業をRPAで自動化。これにより、担当者の負担を減らし、月当たり約90時間の人件費を削減することに成功しました。また、登録作業時の人的ミスをなくすことができました。

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RPAで経理業務を自動化するメリットとは?

RPA導入の大きなメリットは、人の代わりにソフトウェアロボットが作業をすることで、必要な人員を減らせるということですが、それに付随してさまざまなメリットがあります。ここからはRPAで経理業務を自動化するメリットとして、「ミスを削減できる」「生産性の高い業務に人材を振り向けることができる」「スピードアップに繋がる」「コストの削減」「専門知識がなくとも活用できる」という5つを挙げ、一つひとつ詳しく解説します。

ミスを削減できる

経理部門では金銭を取り扱う業務を行っているため、金額が合わない場合、ミスがミスとして明確に露見し、なおかつ、大きな問題の引き金になりかねません。金銭を取り扱う金融機関では、その日の勘定が1円でも合わなければ、原因がわかるまで徹底的に調査をすると言われているように、金銭に関わるミスに対しては厳格であることが求められます。経理業務には正確性が非常に重要なのです。

しかし、前述したとおり、人間はどれだけ熟練していても、その日のコンディションや周囲の状況に影響を受けているため、必ずミスをします。ヒューマンエラーを完全になくすことは不可能です。それに対して、RPAはシステムに問題がない限り、どれだけ長く作業を続けても常に正確な処理を行うことが可能です。人間の代わりにRPAが経理業務を行うことでミスを削減し、大きな問題に繋がるリスクを低下させることができるのです。

生産性の高い業務に人材を振り向けることができる

経理業務は、企業の根幹を支える必要不可欠な重要な業務です。しかし、生産性向上には直接関連しないルーティンワークが多いという側面もあります。
ルーティンワークは手順が決まっていることが多く、RPAで自動化することが可能なため、企業としては経理業務のルーティンワークに割いていた人員を削減でき、削減できた分の人員を別の業務に就かせることができます。これまで経理を担当してきた人材を、RPAが苦手とする企画業務やマネジメント業務などの非定型業務で活用することで、生産性向上につなげることができます。

また、人によって向き不向きはあるものの、定型業務を退屈だと感じる人は多く、次第に仕事に対するモチベーションは低下していきます。RPA導入によって定型業務から解放することができれば、従業員にとっても働きやすい環境が整い、離職を防ぐことにも繋がります。

スピードアップに繋がる

定型的な経理業務は、担当者の熟練度が上がると処理速度は上がっていきます。とは言え、人間が処理できるスピードには限界があります。ソフトウェアロボットであるRPAの処理速度には到底かないません。そのため作業量が多ければ多いほど、経理担当者が行うよりも、RPAで自動化したほうが早く処理を終わらせることができます。

また、経理担当者であれば、長時間同じ作業を続けていると肉体的な疲れや集中力の低下から、処理速度はどうしても落ちていきますが、RPAにはそういった速度低下が起こりません。さらに、経理担当者の労働時間には法的な上限があり、企業としては休憩や休日を与え、法律を遵守する必要があります。それに対して、RPAは24時間365日稼働することが可能です。人間では処理しきれないような作業も処理することができます。その結果、RPAを導入すれば、経理部門全体で見たときに処理可能なキャパシティを増やしつつ、処理スピードを圧倒的に上げることができるのです。

コストの削減

「生産性の高い業務に人材を振り向けることができる」の項目では、経理業務を担っていた人材を別の業務に従事させることのメリットを解説しましたが、経理業務に割いていた人員を単純に減らすことで、人件費を削減することもできます。また、RPAであれば、担当者の昇給や担当者の退職に伴う新たな人材確保のために必要な採用活動費など、人を雇用していることで発生するコストがありません。もちろんRPAを導入したり、運用したりする費用はかかりますが、削減できる費用を鑑みて、トータルでコストを削減できる導入方法を検討することは十分可能です。

専門知識がなくとも活用できる

ここまではRPAを導入することで得られる効果をメリットとして紹介してきましたが、それとは別で、RPAは「導入や運用のしやすさ」もひとつのメリットです。

RPAはプログラミング知識が不要なツールと言われており、実際にさまざまなベンダーが、特別な専門知識がない人でも簡単に扱えるツールを販売しています。例えば、自動化したい業務をソフトロボットに記憶させる「シナリオ作成」もドラッグ&ドロップでできるなど、現場で実際に業務を行っている経理担当者自身が主体的にRPAを導入し、運用していくことができます。

経理の将来性 RPAの普及によって経理の仕事はなくなる?

定型業務を自動化し効率化するRPAが今後普及することで、経理業務が将来的になくなると考える人もいるでしょう。しかし、経理業務が完全になくなるとは言えません。なぜならRPAが得意としているのは、あくまで手順の決まった単純作業だからです。突発的に生じる業務やイレギュラーな対応が必要な業務は、人間がその都度判断をして処理する必要があるので、RPAでは対処しきれません。もちろん今後AI技術の進化によって、ある程度判断を伴う業務もRPAでできる可能性はありますが、完全に自動化できるまでには時間がかかると考えられます。現状ではRPAを人間が行う作業を補助するツールとして導入するのがよいでしょう。

RPA活用のためのポイントとは?

上記のとおり、経理業務に導入することでさまざまなメリットがあるRPAですが、導入に際して気をつけたい注意点がいくつかあります。導入を成功させ、なおかつ、その効果を最大化しながら運用していくためのポイントを、「業務フローの可視化」「小さな定型業務の自動化から始める」「ベンダーのサポートを有効活用する」「RPAに詳しい人材の育成」という4つに分けて解説していきます。これまでにRPA導入に失敗したことがある企業の場合、ここで解説するポイントを押さえていたかを確認したうえで導入を再検討してみることをおすすめします。

業務フローの可視化

RPAを導入する場合、自動化したい業務のフローを可視化することが不可欠です。細かく業務内容を洗い出し、作業手順を一つずつ書き出して、まずは誰が見てもその作業を再現できる状態にしましょう。業務フローを可視化することは非常に手間がかかり、時間もかかるので面倒ではあるものの、この工程を経ることで、どの作業をRPAで自動化すべきなのか、またどこまで自動化できるのかを明確にすることができます。せっかくRPAを導入して業務を効率化するのに、ここを曖昧にしてしまうと、人間との作業分担という観点において、運用のしづらさがネックとなる可能性があります。

また、可視化を行うことで、RPAに関係なく、業務改善すべき問題点が明らかになることもあります。RPA導入をきっかけとして、さまざまな課題を可視化して、できるだけ解消していきましょう。

小さな定型業務の自動化から始める

RPAを初めて導入する場合は、スモールスタートがおすすめです。規模の小さな業務を自動化するところから始めて、RPAによって業務効率化が本当に実現できるのかを検証してみましょう。

スモールスタートには、もしも導入に失敗した場合にもリスクを最小限に抑えられるというメリットがあります。特に経理部門の業務は、その性質上ひとつの失敗が大きなトラブルを引き起こす可能性があります。まずは導入範囲を絞って行うほうがよいでしょう。それ以外にもスモールスタートのメリットとしては、RPAを実際に使ってみることで知識が身につくこと、運用していくうえで対処すべき課題が明らかになること、役に立つということを現場レベルで実感できれば、その後の拡大もスムーズに行えるということなどが挙げられます。また、RPAツールにも種類があり、さまざまなベンダーが販売しています。どのツールが自社の課題に合うかを確認するためにも、スモールスタートがおすすめです。

ベンダーのサポートを有効活用する

前述したとおり、プログラミングスキルやITの専門的な知識がなくても扱いやすいRPAツールがあるため、経理部門の担当者が自分でRPAを導入することは可能です。しかし、導入直後はエラーが発生することも少なくありません。そういったときに、経理部門の人材だけで対処しようとすると原因究明や復旧に時間がかかってしまったり、また別のエラーが発生してしまったりします。RPAの導入自体に手間がかかりすぎていては、業務を効率化するツールとしては本末転倒です。さらに、そのまま頓挫してRPA導入が失敗に終わるケースもあります。

こういった失敗をしないためには、RPAツールを選定する際に、機能や使いやすさだけではなく、ベンダーのサポート内容が充実しているかどうかを確認しておくことが大切です。具体的なチェックポイントとしては「導入時にRPA担当者への講習があるか」「トラブル発生時に迅速に対応してくれる体制が整っているか」「企業ごとに専任の担当者がいるか」などが挙げられます。特に社内にIT人材がいないような中小企業では、ベンダーのサポートを受けられるかどうかを必ず確認しましょう。

RPAに詳しい人材の育成

前項で触れたとおり、導入直後にエラーが発生するケースも含めて、RPAは導入後の定期的なメンテナンスが必要です。もちろんベンダーのサポートを活用することもひとつの手段ですが、自社内にRPAに詳しい人材を確保しておくという方法もあります。より効果的な活用方法を検討したり、経理部門のみならず社内のさまざまな業務でRPAを幅広く活用したりしていくためには、スキルやノウハウを社内に蓄積しておくことは重要です。

RPA人材の育成には、まずベンダーのサポートが受けられないかを確認しましょう。RPAに関するセミナーを積極的に実施したり、勉強方法を指導したりしてくれるベンダーもあります。またツールごとに資格制度を設けているものもあり、明確な目標やモチベーションを持ってRPA知識を身につけていくことができます。

ベンダーのサポートがあまり充実していない場合には、RPA人材を派遣してくれるサービスを活用するという方法もあります。導入後の一定期間だけ指導役としてRPA人材の派遣契約を行い、実際に運用を行いながら社内の人材に知識とスキルを伝授してもらうというやり方です。

RPAによる経理業務の効率化なら日立ソリューションズにおまかせください

日立ソリューションズでは、さまざまなRPA業務自動化ソリューションを提供しており、その一例をここで紹介します。

1つ目は、オンプレミスにもクラウドにも対応したブラウザーベースで利用できるRPAプラットフォーム「Automation 360」です。優れたUIが特徴で、誰でも直感的に扱うことができるため、経理部門の担当者でもRPAの導入や開発を行うことができます。

2つ目は、ソフトウェアロボット開発や社内各所からの問い合わせ対応、運用などのRPA推進部門の業務をまるごと代行する「RPA業務支援BPOサービス」です。「社内の人的なリソースが全然足りない」「社内の人材だけではどうしても運用に不安がある」といった企業におすすめです。

ほかにもさまざまなソリューションをご用意していますので、詳しくは下記URLからご確認ください。

なお、日立ソリューションズの強みはソリューションの豊富さだけではありません。これまでさまざまな企業に対してRPA導入の支援を行ってきた経験があり、その中で蓄積したノウハウをお客さまに提供することで、それぞれの企業や部門に最適なRPA導入を実現できることが強みです。その中にはもちろん経理業務への導入実績もあります。導入後のサポートも充実していますので、まずはお問い合わせください。

関連情報:
Automation 360 適用業務
RPA業務支援BPOサービス

まとめ

経理部門の業務には、RPAが得意とする定型業務が多くあります。しかも、その多くは人間が手作業でやろうとすると非常に手間がかかる作業を含んでいます。つまり、RPAを導入した場合に、その効果が表れやすい業務と言えるのです。社内で広くRPAを活用していきたいと考えている企業にとっては、まずは経理部門でトライアルをしてみるのもよいでしょう。

RPAは現在多くの企業が直面している労働環境の改善や人手不足の解消といった課題にも有効なツールです。ぜひ本コラムで紹介したポイントに注意しながら、導入を検討してみてください。

  • 本コラム記載の情報は2023年9月時点のものです。

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